榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本名も住所も顔も知らない文通相手から夫の殺害を依頼された男の物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(744)】

【amazon 『綴られる愛人』 カスタマーレビュー 2017年5月2日】 情熱的読書人間のないしょ話(744)

ハート形の桃色と垂れ下がった白色の組み合わせがユニークなケマンソウ(タイツリソウ)、淡紫色の地に黄色が特徴的なシャガ、薄桃色のホンシャクナゲが咲いています。黄色いモッコウバラも白いモッコウバラも、いい香りがします。コクテール(カクテル)という品種の赤いバラが咲き始めています。レッドロビンの白い蕾は打ち上げ花火のようです。因みに、本日の歩数は10,509でした。

閑話休題、物語の先がどうなるのか気になって、『綴られる愛人』(井上荒野著、集英社)を一気に読み通してしまいました。

「綴り人の会」という名の会員制の会があります。会員は毎月発行される会報に掲載された自己紹介文を読み、これはという相手を選んで手紙を書きます。便箋に手書きし、封筒に入れ、送料と手数料分の切手を同封し、会宛てに郵送すると、会から相手へ転送されるというシステムです。本名や住所を明かさずに「文通」できるわけです。

この会を通じて、夫の家庭内暴力に悩む東京の28歳の専業主婦・凛子と、金沢勤務の35歳のエリート・サラリーマン、クモオとの文通が始まります。

顔を見たことがないのに、文通を重ねるうちに、二人の気持ちは急速に昂まっていきます。

「東京出張の日取り、決まったら教えてください。前にも書いたとおり、クモオさんが近くにいることを感じていたいから。でも、会うことはできません。彼が生きている間は。約束します。彼が死んだら、あなたに会います。それまではだめ。彼が死んだら、私が金沢へ行ってもいい。もちろんあなたが来てくれれば、東京で一緒に暮らしてもいい。クモオさんがそうしたいなら、仕事をやめればいい。お金のことなんてどうでもいい。生きていけるなら、私は何でもする。私は本気です。2月1日 凛子」。

悩みに悩んだ末、遂に決意を固めたクモオは、凛子の夫殺害を実行してしまいます。

読者は、凛子が実は35歳の人気作家で、マネジャー役の夫の細かい指図を鬱陶しく思っていること、そして、クモオが本当は21歳で、富山県魚津市に住む、就職活動に身が入らぬ三流大学の3年生であること――を知っています。

二人はどうなるのでしょうか・・・。思いがけない結末が待ち構えています。