榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

逆境下でも元気に乗り越えていく幼い兄弟の物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(607)】

【amazon 『風の中の子供』 カスタマーレビュー 2016年12月5日】 情熱的読書人間のないしょ話(607)

東京・杉並の荻窪を巡る散歩会で立ち寄った、私の母校・西田小学校の一角にある郷土資料展示室は、昭和20~30年代の世界がリアルに再現されています。まさに、私が小学生だった時代そのものですので、一瞬、自分が育った荻窪の旧居かのような錯覚に襲われ、懐かしさで満たされました。

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閑話休題、『日本の一文 30選』(中村明著、岩波新書)で、「この作品は、作者が子供になりきることで、作中の子供の姿を実に生き生きと描き出している。子供になりきると、文章は具体的にどう違ってくるのか、表現の実態を探ろう」と、高く評価されている『風の中の子供』(坪田譲治著、小峰書店)が読みたくなり、手にしました。

会社の専務を務める父が、部下の策略によって文書偽造の疑いで警察に拘引され、なかなか帰してもらえない状況下で、苦悩する母の姿と、善太と三平という小さな兄弟が寂しさを乗り越えていく日々が描かれています。

「会社の赤沢銃三が執達吏をつれて来て、三平の家の差押さえ物件をひとつ残らず車に積んで持って行ってしまった。・・・三平の家はこれで空家のようになってしまった。暗く、冷たい。その中に善太と三平はションボリ立っていた。お母さんは弁護士へ行ったし、どうしていいかわからなかった。そのうち、三平が聞いた。『兄チャン、ブランコとってった?』。『ウウン、ブランコなんか持ってかないよ』。『フン、三輪車は?』。『三輪車? どうかなあ。持ってったかなあ。忘れちゃったあ』。善太は首をかしげて見せる。が実は三輪車も持ってってしまったのである。『いいやい。三輪車なんか。あれ、ボロ三輪だ』。話しているうちに、二人は少し元気が出てきた。気持ちをとり直そうと思い出した。『ブランコで遊ぼう』。三平がいった。『ウン、遊ぼう』。善太も快諾した」。

中村明が言っているように、確かに子供たちの気持ちが生き生きと描かれています。個人的には、昭和時代の子供の生活が臨場感豊かに表現されているので、懐かしさが込み上げてきました。