本書があれば、大人だけでなく、家族で里山散歩が楽しめる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(784)】
東京・新宿の都庁近くのホテルで開かれた研究報告会に出席しました。都庁を見上げ、目前に迫った都議選の結果が日本の政治の転換点になるだろうとの予感を抱きました。すぐ近くの新宿中央公園まで足を延ばしました。若き日の太田道灌が鷹狩りの最中に雨に遭い、蓑を借りようとしたところ、若い女からヤマブキの一枝を差し出され、それに「七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞ悲しき」の意が託されていたことを後で知り、無学を恥じた道灌が、これ以降、歌道に励んだというエピソードが銅像で表されています。因みに、本日の歩数は14,832でした。
か閑話休題、『大人の里山さんぽ図鑑』(おくやまひさし著、交通新聞社)は、里山散歩の楽しさが全ページに溢れています。
春の里山、夏の里山、秋の里山、冬の里山の魅力と留意点が、イラスト、写真、文章で綴られています。その対象は植物、昆虫、野鳥など多岐に亘っています。
「夏は昆虫採集の季節」は、こんなふうです。「よそ者は、あっちかな・・・こっちかな・・・とかけまわるが、地元の子供たちにはちゃんと秘密の木があって、彼らは苦もなくカブトムシやクワガタをつかまえてしまう」。私の子供時代も、昆虫少年たちは、それぞれ秘密の木や場所を確保していたことを懐かしく思い出しました。
「カブトムシの武器が大きなツノなら、ノコギリクワガタの武器は大あごだ。クヌギなどの樹液をめぐってよくケンカする場面を見るが、クワガタの体の下へツノをつっこめばカブトムシの勝ち、カブトムシのツノを大あごではさんでしまえばクワガタの勝ちだ」。
「紅黄葉の美しさ」では、実に分かり易い説明がなされています。「落葉樹の紅葉や黄葉は、一種の化学変化で気温が10℃を下る頃になると、水分の蒸散を防ぐために、葉柄のつけ根にコルク質の離層を作って水分の流れをとめてしまう。このために、葉に残された葉緑体のクロロフィルが分解され、緑の色素が消えることで、黄葉の場合はカロチノイド、紅葉の場合は赤い色素のアントシアンが目立つようになるのだ」。子供に紅黄葉の原因を尋ねられたとき、こう答えたら、子供も十分納得することでしょう。
「落葉樹がきれいに紅黄葉するには、昼夜の温度差が重要だ。気温が10℃以下になることが一つの目安だが、10℃前後が続くよりは一気に冷えるほうがよく色づく。また葉が日光に十分当たることも必要だ」。
この一冊があれば、大人だけでなく、家族で里山散歩が楽しめること、請け合いです。