中世の村には、暴力沙汰を避けるための「わびごと」の作法があった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(787)】
散策中に、香りのよい大輪の白い花を咲かせているタイサンボクを見つけました。赤色の花と白色の萼のコントラストが美しいゲンペイカズラに目を惹かれました。萼片と花弁が細長く伸びたブラッシアは、クモのようです。スーパーで生きたサワガニが売られています。我が家では、ナツツバキ、アメリカノウゼンカズラ、クチナシが咲き競っています。因みに、本日の歩数は10,438でした。
閑話休題、『戦国の作法――村の紛争解決』(藤木久志著、講談社学術文庫)には、興味深いことが書かれています。
我が国の中世の村では、村同士の争い事が起こったとき、暴力による解決や、暴力に対する暴力の連鎖を回避するための「わびごと」の作法があったというのです。こういうことをこつこつと研究している学者がいることに驚かされます。
「中世の村が何か争いごとで、在地の報復のルールに背いたとみなされたとき、村を代表して『わびごと』つまり謝罪や降伏の許しを乞いに赴く、その使者もまた解死人(げしにん)とみられ、その謝罪の手順にも、おのずから独特の作法が形づくられていた」として、いくつかの事例が挙げられています。加害者(下手人)が所属する集団の一員で、加害者本人の身代わりとして被害者側に引き渡される役割を担う者が「解死人」で、被害者側はその謝罪の意思表示に免じて、解死人を処罰しないというルールが成り立っているのです。
「村のとった降参の手順は、①近隣の第三書を仲人に立てて、②有力な古老百姓たちが自ら使者となり、③村で『煙をあげ』、④相手の大将の前に出て『頸をのべ』、⑤『過分の一献』も捧げる、というものであったようで、その使者は村のために『命を捨』てる『げしにん』とみなされていた」。
この「わびごと」の作法は、村レヴェルだけでなく、戦国の武士の世界でも、同様のものが存在したと述べられています。