野生生物の生と死を通じて、いろいろなことを考えさせられる写真集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(867)】
散策中に見つけた昆虫の名前が分からないので、昆虫に造詣の深い阿部純氏に問い合わせたところ、ウスバキトンボの多分雌、シオカラトンボの雌、スズメガ科のコスズメの幼虫(この写真では、下が頭で、尾角があるのは尻)と判明し、気分がすっきりしました。シオカラトンボの交尾を目撃しましたが、両者が離れた瞬間の写真しか撮れませんでした。ハグロトンボが飛び回っています。因みに、本日の歩数は15,045でした。
閑話休題、『森の探偵――無人カメラがとらえた日本の自然』(宮崎学・小原真史著、亜紀書房)は、自然界の報道写真家を名乗る宮崎学が、無人カメラを使って半世紀に亘り撮り溜めた野生生物の写真の山から選び出されたもので構成されています。
ノウサギがしっかり写っています。
雪上でジャンプするヒメネズミの写真は幻想的です。
著者を襲撃するフクロウの写真は迫力があります。
杭の天辺に止まり、頭に雪が降り積もったフクロウは、哲学者の趣です。
福島県の原発事故による立ち入り禁止区域内の家屋に出入りするイノブタの巨大さには驚かされます。「放射性物質から逃れるために住民は大急ぎで避難したのですが、飼育されていたブタは残されました、豚舎から逃げ出した個体が野生のイノシシと交尾をしてイノブタが生まれたのでしょう。撮影された巨大なイノブタは、牙もあるオスでしたから、これからもイノシシやイノブタたちと交わって増え続けていくことでしょう」。
東京工業大学キャンパス内のイチョウの木をねぐらとしている200羽近いワカケホンセイインコの写真は壮観です。私も、この場所で何度か挑戦して果たせなかっただけに、羨ましい限りです。
私が一番衝撃を受けたのは、「生と死のエコロジー」に登場する野生動物たちです。ニホンジカの死体を食べるツキノワグマが時系列で写っているのですが、最後は骨しか残りません。これとは別に、ニホンジカの死体の蛆をすするツキノワグマの写真もあります。ニホンジカの死体を食べるイノシシ、タヌキ、キツネの写真もあります。ニホンジカの眼窩にびっしりと並んで蠢く蛆の写真と、ニホンザルの死体に湧いた蛆を食べるオオルリの写真には、思わず、のけ反ってしまいました。
野生生物の生と死を通じて、いろいろなことを考えさせられる写真集です。