榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

植物が、動物同様、生殖を行うことに、科学者が気づくまで・・・【情熱的読書人間のないしょ話(931)】

【amazon 『考える花』 カスタマーレビュー 2017年11月4日】 情熱的読書人間のないしょ話(931)

千葉・柏のこんぶくろ池自然博物公園は、こんぶくろ池・弁天池の湧水を囲み、東京ドーム約4個分の森林が広がっています。管理人が最近撮影したタヌキ(4匹家族の由)とニホンノウサギの写真を見せてくれました。滅多に見られないクロコノマチョウ(俗称:カレハチョウ)を見つけました。生まれて初めてこのチョウを見てから9日しか経っていないのに、何という幸運でしょう。ゴンズイは、赤い実と黒い種の色の対比が鮮やかです。アカメガシワの葉が透けて見えます。イヌザンショウは、サンショウに似ていますが、葉の臭いがよくないので区別できます。マムシグサが有毒の赤い実を付けています。因みに、本日の歩数は11,806でした。

閑話休題、『考える花――進化・園芸・生殖戦略』(スティーブン・バックマン著、片岡夏実訳、築地書館)は、植物の生殖器である花を巡る知識や情報が満載です。

「ダーウィンの予言」で記されているエピソードは、チャールズ・ダーウィンの面目躍如です。「1862年、ナチュラリストのチャールズ・ダーウィンは、花とガという特別なコンビについての有名な予言をした。・・・ダーウィンはランを熱心に研究していた。彼は1862年以前に、偉大なランの蒐集家ジェームズ・ベイトマンから生きたランを贈られていた。ダーウィンは大きく蠟のように白い花を調べ、その距が長く、先端に数滴の蜜がたたえられていることに気づいた。その蜜の管は30センチ近い長さがあった。・・・この距の奥まで届いて蜜を吸うことができる長大な口吻を持つ昆虫、おそらくはスズメガが、マダガスカル島のどこかにまだ発見されずにいるに違いないと、ダーウィンは予言した。・・・ダーウィンの科学者仲間やランの蒐集家を含め多くの人々は、彼が完全に間違っていると思ったが、ダーウィンは自分の予言を固持していた」。何と、ダーウィンの死後、最初の予言から20年以上経ってから、大型のスズメガ、キサントパン・モルガニイ・プラエディクタがマダガスカルで発見されたのです。

「植物の性の発見」では、先人たちの苦労が語られています。「植物は有性生物だが、固着性の生活を送り、その動きのタイムスケジュールは人間が気づけないほどゆっくりしている。さらに、花粉粒とそれを受ける雌しべの先端は、拡大しなければ十分に観察することができない。そのようなわけで植物が、動物の生殖と同じように、胚珠を受精させるために精子(花粉粒に包まれた)を作ることに科学界が、園芸家が、そして最終的に誰もが知るようになるまでには時間がかかった。・・・ドイツの植物学者ルドルフ・ヤーコプ・カメラリウスは、花の咲く植物の性について、初めての決定的な圃場実験を行なった。医師で植物学者のカメラリウスは、テュービンゲン植物園の園長に就任した。数ある研究の一環としてクワ、トウゴマ、ホウレンソウ、トウモロコシ、ヤマアイを観察していたカメラリウスは、メスのクワの木が、もっとも近いオスの木から遠く離れていると、種の入っていない空の実を結ぶことを発見した。同様に、トウモロコシの雄花を切り取ってしまうと、『メス』の穂軸に種ができなかった」。

「人気投票」では、世界各国で人気のある花がリストされています。「花の好みは国、文化、時代によって大きく違う。・・・(アメリカでは)予想通り、大部分がカリフォルニアで栽培されるバラは、カーネーション(第2位)、キク(第3位)、ユリズイセン(第4位)を抑えている」。チューリップが第5位で、ガーベラ、ユリ、グラジオラス、アヤメ類、カスミソウが続いています。イギリスでは、バラ、ユリ、フリージア、チューリップ、スイートピー、さまざまなラン、カーネーション、ヒマワリ、アネモネの順となっています。「中国では、ウメの花のほうがサクラよりも人気が高い。中国庭園からはボタン、キク、中国原産のシンビジウム、コウシンバラ、ツバキ、ツツジ、ハス、モクセイへの伝統的な深い崇拝がうかがえる」。

「野生の花で本当に黒いものはない。すべてちょっとした目の錯覚なのだ」。「青いバラは自然にはまったく存在しない」。

植物の世界は奥が深いことを再認識させられました。