カブトムシとクワガタムシが戦ったら、どちらが強いか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1108)】
あちこちで、バラが芳香を放ちながら、咲き競っています。因みに、本日の歩数は10,525でした。
閑話休題、カブトムシとクワガタムシが戦ったら、どちらが強いか、この疑問に真っ正面から答えてくれるのが、『カブトムシvs.クワガタムシ 強いのはどっちだ!――森のファイターたちは、どうやって生まれたのか』(本郷儀人著、講談社)です。
カブトムシ、クワガタムシの研究者である著者は、ある一夏を通して、カブトムシとクワガタムシが同じ餌場で遭遇した22例を観察しました。うち13例はカブトムシ対ミヤマクワガタ、9例はカブトムシ対ノコギリクワガタです。「どちらが強かったと思いますか? なんと、そのすべてのケンカでカブトムシがクワガタムシを餌場から蹴散らしてしまいました。直接的なケンカが見られなかった9例に関しても、お互いの体が少し触れたかどうかという段階で、すべてクワガタムシのほうが餌場から逃げ出してしまいました。結局、クワガタムシがカブトムシに勝つシーンを見ることはできませんでした。どうやらケンカは圧倒的にカブトムシのほうが強いようです」。
ミヤマクワガタ対ノコギリクワガタの戦いでは、どうでしょうか。著者は119戦を観察しました。「どちらが何勝したかを見てみると、ミヤマクワガタが40勝でノコギリクワガタが79勝という結果になりました。・・・どうやらこのバトルロワイヤル、体のサイズは大きいものの、上手投げ一辺倒のミヤマクワガタよりも、上手投げに加えて下手投げも使えるノコギリクワガタに軍配が上がりそうです」。
カブトムシ同士の戦いでは、どうでしょうか。「カブトムシのオス同士の戦いにおいて、対戦者間のサイズの差が大きい場合、激しい戦いに入る前に、小さいオスが逃げ出すことで勝負がついてしまうことが証明されたのです」。
クワガタムシ同士では、どうでしょうか。「対戦者間の大きさがあきらかに違えば、小さいほうの個体がすぐに逃げ出してしまい、戦いはエスカレレートしないのです」。
カブトムシもクワガタムシも、「むだな争いは避ける」ということを実践しているのです。
彼らが戦うのは、餌を独占するためでしょうか。「彼らにとって本当に大切なのは、餌そのものではなく、その餌場にやってくるメスの存在です。カブトムシやクワガタムシにとって、オスとメスがめぐり合うことのできる、唯一の場所が餌場なのです。オスたちが餌場で争うのは、そこを独占して、そこにやってくるメスを手に入れるためなのです」。
それでは、戦いに弱い、小さなオスたちはメスとセックスできずに終わってしまうのでしょうか。「大きなオスたちのそばで何もせず、ひたすらじっと耐えているのでしょうか? いえいえ、そんなことはありません。ただ指をくわえて待っていても、何も起こりません。彼らはとてもうまい方法を使ってメスを奪い取ろうと、チャンスをうかがっているのです」。
「小さなカブトムシのオスは、大きなオスと餌場で衝突して戦いになるのを避けるために、より早い時間から餌場に現れるようです。いまの段階では、ミヤマクワガタや本州のノコギリクワガタも同じような行動を取るのか、まだあきらかにはなっていないのですが、もしかすると同じような傾向が見られるかもしれません」。
カブトムシもクワガタムシも、メスを獲得するため、小さなオスたちは涙ぐましい努力をしているのです。「彼らは与えられた最悪の状況の中で、自らの適応度を最大限に上げること、つまり、自らの子孫を最大限多く残すことに、最善を尽くしているのです」。自分のことのように、感動を覚えてしまいました。