貧しさゆえに新聞奨学生となった者の「労働に支配された生活」・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1169)】
我が家の庭の片隅で、白いキキョウが咲き始めました。夕刻、東京・神楽坂で開かれた懇親会に出席しました。因みに、本日の歩数は12,225でした。
閑話休題、早起きしなければならない新聞配達という仕事に、若い頃から尊敬の念を抱いてきました。
『新聞奨学生 奪われる学生生活』(横山真著、大月書店)には、貧しさゆえに新聞奨学生となった著者の経験が詳細に綴られています。
「朝刊・夕刊作業ともに、新聞が販売店に到着する前に始まる。朝刊が販売店に届くのは(夜中の)2時40分頃なので、次のような作業の時間を逆算して起床する。朝刊作業では、バイクをスタンバイするところから始まり、次に区域ごとにある『手板』と呼ばれる購読者の(購読停止、新規購読、期間止め、要望などの)増減表を記入する。・・・新聞が届くと、作業場へバケツリレーのように投げ入れていく。そして、各区域の作業場で本紙に折り込みチラシを1部ずつはさんでいく。『折り込み作業』と呼ばれ、この作業を約15分で終わらせる。・・・それらの準備が終わると250部ほどの新聞をバイクのカゴや荷台に積んでいき、そこからやっと配達がスタートしていく」。
「配達は遅くとも(朝)6時半頃までに終了する。折り込み作業の時間を除いた配達時間は3時間~3時間半程度だが、区域によってはバイクに乗っている時間よりバイクに乗らずに走っている時間のほうが長い。オートロック式ではないマンションや団地の場合だと、新聞を購読者の『ドアポスト』まで走って持っていかなければならないからだ。オートロック式であれば1階に設置されている『集合ポスト』に新聞を入れてよいが、そうではない集合住宅も多いため、配達員には体力がかなり求められる」。
「15時頃に到着する夕刊も同様に作業を行っていく」。
新聞奨学生にとって最大の敵、最大の試練は、雨、とりわけ梅雨であり、配達員の頭痛の種は集金活動だと記されています。
新聞奨学生にとっての障壁は、「夕刊の壁問題」(午後の4、5限の授業と夕刊の配達が被る)と「休日の重複不可問題」(新聞奨学生同士の「休日」は被らないように設定されるので、必修科目に出席できないケースが生じる)としています。これらによって「学生生活」が奪われてしまうというのです。「新聞奨学生にとって、最もキツイのが一般学生との学生生活のギャップではないだろうかと思う。私自身も一番これがこたえた」。
「新聞奨学生の生活は、一言で言うと『労働に支配された生活』だ」と、著者は振り返っています。「新聞奨学生の学生生活はかなり『ブラック』なものとなっている。それは販売店側が奨学生に対して、学校生活よりも業務を優先するように求めていることが要因の一つとしてあげられる。とは言っても、すべての新聞社、販売店が『ブラック』とは限らず、そこまで『ブラック』ではない販売店もあり、奨学生の側からすると、販売店によって当たりはずれがある」。
彼らの背景には貧困があることを踏まえて、サポート体制を充実させるために、我々にできることは何だろう。