榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ゴータマ・ブッダの考え方に帰還したのは、親鸞と道元だけだ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1472)】

【amazon 『超越と実存』 カスタマーレビュー 2019年5月1日】 情熱的読書人間のないしょ話(1472)

巣作りするツバメ、囀るツバメ、囀るシジュウカラ、囀るヒヨドリ、飛ぶコサギ、片足を水中で震わせて獲物を捕らえようとするコサギ、コミスジをカメラに収めました。ナニワイバラ(ナニワノイバラ)が白い花を、カクテル(コクテール)という品種のバラが赤い花を咲かせています。カラタネオガタマの花冠が黄白色で基部が赤紫色の花がバナナのような匂いを漂わせています。トキワマンサクが白い花を、ドイツスズランが白い花を付けています。因みに、本日の歩数は13,601でした。

閑話休題、『超越と実存――「無常」をめぐる仏教史』(南直哉著、新潮社)は、滅多に出会えない、力の籠もった著作です。

著者が取り憑かれてきたのは、「死とは何か」と「私が私である根拠は何か」という問題です。

「仏教では、『無常』と呼ぶ『実存』には存在根拠が欠けていると考えるが、仏教以外の思想は根拠があると考える。その根拠を押さえれば、実存の『核心』を理解できると信じている」。

ゴータマ・ブッダを淵源とする、著者が最もユニークと思う考え方が、その後、どのように扱われ、意味づけられ、あるいは変質させられてきたかが、インド、中国、日本の仏教の歴史を通じて語られていきます。「『無常』『無我』『空』『縁起』などのキー・コンセプトでゴータマ・ブッダ以来道元禅師までの思想的言説を串刺しにして、これを一貫したストーリーとして語り、結果的に一種の見取り図を作ろうというのだ」。

ゴータマ・ブッダの死後、無常や無我とは相反する実体論的思考や超越的理念が、どのようにブッダの教えに導入されていったかが明らかにされています。

著者の結論は、こういうものです。「親鸞は『成無常(無常になる)』によって、仏教を突破した。道元は『観無常(無常を認識する)』によって釈尊に帰還した。いずれにしろ、実存を根拠づけるものとしての超越的理念を排除しながら、実存を受容する方法を提案したのである。その思想的挑戦は、世界思想史上、稀有の実績だと私は思う。しかし、この実績は、後の『日本』には引き継がれなかった。極度の思想的・実践的緊張を伴う彼らのアイデアは、多くの人間には耐えられないからである」。