十字軍の歴史の全体像を俯瞰するのに最適な一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1530)】
ハイビスカスが赤い花を咲かせています。ピーマンが実を付けています。外見も感触もナイロン・ストッキングのようなキノコを見つけました。我が家に、また、ミスジハエトリが現れました。頭部が赤いのが雄の特徴です。因みに、本日の歩数は10,151でした。
閑話休題、十字軍というと、中世ヨーロッパにおけるキリスト教勢力のイスラーム勢力に対する聖地(エルサレム)奪還運動といった漠然とした概念しか持っていなかったが、『図説 十字軍』(櫻井康人著、河出書房新社・ふくろうの本)によって、3つのことを学ぶことが出来ました。
第1は、十字軍に参加したキリスト教徒たちを駆り立てたのは、聖地奪還よりも、自らの贖罪が目的であったという指摘。
第2は、十字軍は700年間という長い期間に亘って何度も行われたこと。
第3は、十字軍によって、結果的に、キリスト教文明とイスラーム文明が影響し合い、ヨーロッパに大変化をもたらしたこと。
「現在、十字軍史研究の世界では、次のように定義されている。十字軍とはキリスト教会のために戦うことで贖罪を得ることであり、それは1095年からナポレオンによるマルタの占領(1798年)までの約700年間、いたる所で展開された、と。すなわち、十字軍の本質は『贖罪』であり、その目的地は聖地に限定されず(聖地十字軍と非聖地十字軍の同等性)、それは連続性を持つ運動であった。贖罪、より正確に言うとローマ・カトリック教皇の認める贖罪である十字軍は、根本的に宗教・信仰とは不可分のものであった」。
「約700年の間に十字軍はその性格を大きく変化させた。具体的に言うと、14世紀以降、十字軍はオスマン帝国の攻撃からヨーロッパ世界を防衛することを意味するようになる。ここでは、12~13世紀の十字軍を『盛期十字軍』、14世紀以降の十字軍を『後期十字軍』と呼ぶ」。
十字軍は結局、失敗に終わるが、その後の西ヨーロッパ世界に重大な影響を与えました。相次ぐ遠征の失敗により教皇の権威は揺らぎ始め、逆に遠征軍を指揮した国王の権威は高まりました。また、十字軍の輸送によりイタリアの諸都市は大いに繁栄し、地中海貿易による東方との交易が再び盛んになり出します。これにより東西間で人と物の交流が活発になると、東方の先進文明圏であるビザンツ帝国やイスラームから文物が流入し、西ヨーロッパ人の視野は拡大します。こうして十字軍がきっかけとなり、西ヨーロッパ中世世界は大きく様変わりすることになったのです。
十字軍の歴史の全体像を俯瞰するのに最適な一冊です。