榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

岸本佐知子と私は、一卵性双生児のダメ人間か・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1867)】

【amazon 『ひみつのしつもん』 カスタマーレビュー 2020年5月24日】 情熱的読書人間のないしょ話(1867)

黄色い花のオオキンケイギクが群生しています。アマリリスが赤い花を咲かせています。あちこちで、さまざまな色合いのバラが咲き競っています。サツキ(赤紫色)、ヤマボウシ(白色)も頑張っています。我が家の小さな多胡灯籠は、コケが付き、少し貫禄が出てきました。

閑話休題、『ひみつのしつもん』(岸本佐知子著、筑摩書房)は、常人とはかけ離れた感性の持ち主、岸本佐知子の奇想天外、抱腹絶倒、七転八倒のエッセイ集です。

「哀しみのブレーメン」は、このように始まります。「たいてい家でじっとしている生活だが、たまに家から這い出すと外の世界が物珍しく目新しく、会う人すべてが面白く楽しく、はしゃぎすぎてかならず失敗をする、失敗しかしない。友人と久しぶりに会えば興奮していらぬことまでぺらぺらしゃべって相手の話はこれっぽっちも聞かず酒をがぶ飲みして酔いつぶれる。・・・仕事の打ち合わせをすれば日ごろの無沙汰や締切りの遅れなどを埋め合わせようとしてますます自分の首を絞めるような無理な約束をする。・・・落とす。なくす。遅れる。迷う。気づかない。そして結局ほうほうのていで帰ってきて部屋の片隅で手も足も出ず何もかもいやになって体育座りで頭をかかえる」。な、な、何と、これは私のことではあるまいか、そんな気にさせられてしまう、恐るべき筆力。

「それでも人間とはしぶといもので、こんなふうでもやっぱり生きていたいと思う。なんとかしてなけなしの自尊心を保ち、先に進むよすがにしたい。そこで私は家の中を見まわして、『明らかに自分よりダメだ』と思えるものを探す」。

「渋滞」にも、なぜか親近感を覚えてしまいました。「食卓の上にはそういった、何かしなければならないのに体が動かずそのままになっているものたちがたくさん渋滞し、堆積している。備忘録がわりに目につきやすい食卓に置いてあるのだが、だんだんと目が慣れてそれも風景の一部となる。一つひとつの物が意味を失い、ただ食事のスペースを圧迫する疎ましい塊になり下がってしまう。・・・この腐った性根はいかにすれば叩き直るのか」。岸本佐知子と私は一卵性双生児ではあるまいかと思われるほど、ダメ人間ぶりが酷似しているので、驚いたり呆れたり。

「いつか『グズな人には理由がある、ただしグズは魂と直結しているのでグズを矯正すれば魂も死ぬ』というタイトルの本を書くのが夢だ。・・・そもそもすでにタイトルを考えただけですっかり満足し、もう書いた気になりかけている自分がいるではないか」。