榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

あの作家が、カップ焼きそばの作り方を書いたら、こうなる?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1956)】

【読書クラブ 本好きですか? 2020年8月22日号】 情熱的読書人間のないしょ話(1956)

ツクツクボウシの雄、アブラゼミの雄、クロウリハムシをカメラに収めました。チトニア(メキシコヒマワリ)が赤橙色の花を咲かせています。トウガンが花と実を付けています。

閑話休題、『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら 青のりMAX』(神田桂一・菊池良著、宝島社)は、あの作家が、カップ焼きそばの作り方を書いたら、こうなるだろうという文体模写が楽しめます。

登場する109人のいずれも面白いが、とりわけ傑作と思われたのは、紫式部、石川啄木、フランツ・カフカです。

紫式部の『三時物語(桐壺)』――。「いづれの御時にか。ぺやんぐ、いっぺいちゃんあまたさぶらひ給ひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬがすぐれて時めき給ふかっぷやきそばばごーんありけり。はじめより、我はと思ひあがり給へる御かたがた、ばごーんをめざましきものに貶しめ妬み給ふ。同じ程、それより下臈の更衣たちは、ましてやすからず」。

石川啄木の『一握の麺』――。「東海の小島の磯の白砂で お湯をわかせて 蟹つかまへる  頬につたふ なみだの味の 一握の目の前の麺食べるを忘れず  大海にむかひて一人 三分間 食べんとするはカップ焼きそば」。

フランツ・カフカの『麺身』――。「ある朝、ザムザが目覚めると、自分が一個のカップ焼きそばになっていることに気づいた。彼は白いポリエステルの立方体になって横たわっている。表面はビニールで包まれていて、『カップ焼きそば大盛』と書かれていた。『これはいったいどういうことだ』。さらにザムザは気がついた。自分の中に熱湯が入っているのだ。――『やれやれ、こうなると三分後に湯切りしないといけないじゃないか』――しかしそれは実行不可能だった。彼には足がないので立ち上がることができない。身体を傾けて湯切りすることはできない相談であった。彼は壁掛け時計のほうを見やった。そして、『これはいかん』と思った。六時半であった。もうすぐ三分が経つ。それを過ぎると麺が伸びてしまう」。