榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

一つの発見がありました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2159)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年3月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2159)

ハクモクレン(写真1~5)、サンシュユ(写真6、7)が見頃を迎えています。レンギョウ(写真8、9)、アカメネコヤナギ(写真10)、クロッカス(写真11、12)が咲いています。我が家でも、庭師(女房)が可愛がっているクロッカス(写真13、14)が頑張っています。

閑話休題、「古本」とか「読書」という単語が含まれる書名を見ると、つい、手にしてしまうのが私の悪い癖です(笑)。『古本愛好家の読書日録』(高橋輝次著、論創社)を読んだら、一つの発見がありました。

「神戸の歌人、犬飼武ふたたび――『小徑集』を読む」に、こう始まります。「私は旧著、『編集者の生きた空間』に収録した一遍で、英文学者で『水甕』の歌人、犬飼武を中心に、その交友関係を次々と探求した文章を綴った。・・・歌集に『吉備川原』『愛哉』、奥様のアララギ会員、篤子さんと一緒に出した『小徑集』がある」。

篤子の短歌が引用されています。
●いきどほりつつみて出勤せし夫をさびしみつつ着替をたたむ
●かへり来し夫の不機嫌つたはりてさびしく汁をあたためてゐる
●言すくなき夫に随ひ半日を疲れて須磨よりひとり帰り来
●不きげんに夫が手渡す上着より街のほこりと陽のにほひする
●あはただしく朝片付にかかる前鉛筆一本丁寧に削る

「(引用は)夫のふきげんな態度を唱ったものがいささか多すぎたかもしれない。つまりは犬飼氏、外でがまんして穏やかに振舞っている分、家ではネガティブな感情が正直に表れる性分だったのだろう。・・・最後の一首は歌人らしい生活風景の一齣であろう」。

武の短歌も挙げられています。
●一日八時間は一人ゐる室がいつか虚静に狎れゆかむとす
●めったにノックなき室に一人ゐて娼婦マヤを読み午後は聖書を読む
●失語症とわれがなりゆく経路には妻の失語の背景があり
●あるポウズ君に示して来し吾が安堵すといへば無残に響かむ
●衰ふる吾をあはれみ妻が焼きし薄き肉片をゆふべは噛めり
●五號車より下り立ちし妻は頬紅く童女の如き含羞を見す

「(最後の歌について)老年になっても、こういう歌がつくれるとは、やはり犬飼氏は愛妻家なのか、と思う。おそらく妻への会話の仕方が意に反して不器用な方だったのではないか」。

「私は犬飼武氏も、神戸文芸史上、欠かせない文学者の一人とすて、もっと再評価してもらいたいと願っている」。

なぜか、『小徑集』を、じっくりと読んでみたくなりました。