榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

立花隆ゼミ生たちが行ったインタヴュー集、その1・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2284)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年7月14日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2284)

大谷翔平が「1番指名打者」と「先発投手」という史上初の二刀流で出場する米大リーグのオールスター戦を見逃さないように、8:00~13:00、テレビに齧り付いていました。大谷が高校1年の時、作成した目標達成シートは、私たちにも役立ちます。例えば、「運」は、「ゴミ拾い」「部屋そうじ」「審判さんへの態度」「本を読む」「応援される人間になる」「プラス思考」「道具を大切に使う」「あいさつ」から成り立っています。「人間性」は、「愛される人間」「計画性」「感謝」「継続力」「信頼される人間」「礼儀」「思いやり」「感性」で構成されています。「メンタル」は、「一喜一憂しない」「頭は冷静に心は熱く」「雰囲気に流されない」「仲間を思いやる心」「勝利への執念」「波をつくらない」「ピンチに強い」「はっきりとした目標・目的をもつ」と細分化されています。大谷というのは、若いのに、桁外れの凄い人物ですね! あちこちでオニユリが咲いています。

閑話休題、『二十歳のころ――立花ゼミ「調べて書く」共同製作(Ⅰ 1937~1958)』(立花隆+東京大学教養学部立花隆ゼミ著、新潮文庫)は、立花隆ゼミ生たちが行ったインタヴュー集です。

とりわけ興味深いのは、「茨木のり子にきく」、「﨑田昭夫にきく」、「妹尾河童にきく」、「山田太一にきく」、「筑紫哲也にきく」の5つです。

●茨木のり子――
「今の二十歳の人に? そうね、特に女の人なんかそうだと思うんですけど、愛されることばかり考えてて、だからとっても甘ったれですよね。親に対しても、友人に対しても、恋人に対しても。愛するというのはどういうことか、少しめざめてほしいのです。相手の欠点も、駄目部分も含めて能動的に愛するってことは大変ですけれどねえ、自分も傷つくし。あんまりいい答えになってないなあ(笑)、二十歳の人たちにいう言葉としては」。

●﨑田昭夫――
「私は(長崎に落とされた)原爆を炸裂した瞬間から見ているわけですが、ほとんどの人は炸裂したその瞬間の火の玉というのは見ていないんです。私はたまたま炸裂する前に、高射砲弾の音で空を見上げた。だから私はまさに一部始終を体験することになったんです。ほとんどの被爆者は、閃光を見た瞬間に吹き飛ばされて気を失ってしまったと言います。原爆のことをピカドンと言いますね。この言葉だとピカッと光った瞬間ドンという音がして短時間で終わるような感じがしますが、原爆の光はそんな一秒や二秒でおさまるような生易しい光じゃないんですよ。私は十秒くらい続いたんじゃないかと思います。正確なところはわからないですが、一、二秒じゃないです。とにかく私は死ぬような熱さと苦しみの中で、その時間がとてつもなく長く続くように感じました」。

●妹尾河童――
「父親の言葉ですね。『この戦争もやがて終わるときがくる。それまで我慢するんやで。何に我慢してるか分かっていたら我慢できるから。それから、戦争が終わったとき、恥ずかしい自分になっていたらあかんよ』と、父親が僕にいっていた。そうそう、もう一つあったなあ。『何が本当のことか、じっとよく見ることや。新聞に書いてあることが全部ホンマのことやと思わんほうがええ』と父親がいっていたこと。自分の視点を持つことが大事だというのが、僕を支えるものになっていた」。

●山田太一――
「年齢というものは、不思議な力を持っていると思いますね。たとえば十歳の時には、どんなに賢い子でも異性に対する性欲っていうのはよく分からないと思うんだ。だけどどんなに頭が悪くても二十歳になれば分かるよね。つまり年齢にはその年齢その年齢の限界と可能性が越えがたくあると思う。だから二十歳の時には二十歳だから輝ける部分っていうのがあると思うんだなあ。で、だんだん年齢によって変わってくる。その年齢になることによって手に入るものと失うものがあります。僕はそれぞれの年歴に手に入れられる輝きってのがあると思う」。

●筑紫哲也――
「うまい飯を食ってうまい酒を飲み、大声で歌って、恋をすることを大事だと考える。そして人生いまわのときに、どれだけ『ああ、面白かった』って言えるかが、人生にとっての最終決算だと考える。それはすごく正しいと思う。あの世に土産を持っていったってしょうがないんだから。最後に『俺は面白い人生を送った』って思えるかどうか」。