榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本書のおかげで、昆虫が虫こぶをつくる理由がはっきりした・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2285)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年7月15日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2285)

羽化して、そう時間が経っていないと思われるニイニイゼミ(写真1)を見つけました。あちこちにニイニイゼミの抜け殻(写真2~5)が残されています。ナツアカネの雌あるいは未成熟な雄(写真6、7)、キイロスズメバチ(ケブカスズメバチ。写真8、9)、クロバネツリアブ(写真10、11)、マメコガネ(写真12)に出会いました。オクラ(写真13)、モミジアオイ(写真14~16)が咲いています。因みに、本日の歩数は11,563でした。

閑話休題、『昆虫学者の目のツケドコロ――身近な虫を深く楽しむ』(井手竜也著、ベレ出版)で、とりわけ勉強になったのは、「虫こぶをつくるわけ」、「国内旅行も考えもの」、「昆虫をマネる」の3つです。

●虫こぶをつくるわけ――
「いったいなぜ昆虫のなかには虫こぶをつくるものがいるのだろうか? ある人は植物が昆虫から身を守るために虫こぶをつくっているのではと考えた。・・・またある人は、虫こぶは昆虫が植物をかじったり、汁を吸ったりした結果、たまたまそこが変形したようなもので、植物にとっても昆虫にとっても何の意味もないもの、とも考えた。・・・カギとなるのは、虫こぶをつくる昆虫にとって、虫こぶはエサであり、隠れ家であるという点だ。・・・植物を食べる昆虫はふつう、植物の上を動き回りながら、若葉など、やわらかくおいしい部分を探して食べ歩くが、タマバチの幼虫の場合、虫こぶの中で一歩も歩くことなく、体の周りのごはんだけを食べて育つことができる。実際、タマバチの幼虫には足がなく、そもそも動き回ることは考えていないようだ。これを見る限り、少なくとも昆虫にとって、虫こぶがエサを得るのに役立っているということは間違いなさそうだ。・・・ひとつひとつの虫こぶの形や構造にどんな意味があるのかは実験的にはほとんど明らかにされていないが、この虫こぶの壁は、タマバチの幼虫を包み込み、外的の昆虫や小動物、さらには高温や乾燥のような、昆虫にとって生きづらい環境の変化から身を守るのに役立ちそうだ。多くの昆虫たちが虫こぶをつくるようになったのには、きっとこういった理由があったのだろう」。この説明のおかげで、長年の疑問が氷解しました。

●国内旅行も考えもの――
「見落としがちだが、たとえ同じ日本国内であっても、ある場所にいた昆虫が本来は自力ではたどり着けないような場所に運ばれてしまえば、運ばれてきた昆虫は外来昆虫と同じだ。これは、運ばれてきた場所に同じ種の昆虫が生息していたとしても問題となることがある。有名なのはゲンジボタルという代表的なホタルの仲間だ。ゲンジボタルは西日本から東日本にかけて広く分布していて、初夏の夜を優しく瞬く光で彩る、日本の風物詩ともされる昆虫だ。そのためもあって、もともとたくさんいたゲンジボタルが減ってしまった地域では、ホタルを増やそうと、違う地域のゲンジボタルを連れてきて放してしまうことがある。だが、西日本のものと東日本のものでは、光ったり消えたりする間隔が違っているなど、見た目には同じホタルでも、性質が違うことが知られており、実際に遺伝子レベルでも異なっていることが判明している。たとえそれがゲンジボタルを復活させようとしてやったことだとしても、残念ながら外来昆虫を持ち込んだのと変わりない。もしかすると、もともとそこに住んでいた残り少ないゲンジボタルは、その影響で完全にいなくなってしまうかもしれない。もちろん、人の目にはゲンジボタルが増えて復活したように見えるが、じつはまったく違うものたちという、想像するとちょっと恐ろしくなることが起こってしまうのだ」。あな恐ろしや。

●昆虫をマネる――
「昆虫のマネをすることで、人はその力を手に入れようとしている。たとえば、コウチュウの羽だってマネすれば役に立つ。カブトムシやカナブンなど、コウチュウとよばれる昆虫たちは、4枚ある羽のうち、前の2枚を硬くして、体を守る防具とし、後ろの羽はその下に上手に折りたたんでいる。硬い羽は空を羽ばたくには適さないので、飛ぶときに主に使うのは後ろの羽だ。なので、コウチュウの仲間の後ろ羽は、コンパクトにたたんだ状態から、絡まることなく、すばやく広げることができるよう、折りたたみ方が工夫されている。この折りたたみ方をマネすれば、移動時には小さくコンパクトにたたんでおくことができ、使うときにはすばやく広げられるものをつくれるかもしれない。折りたたみ傘のような小さなものから、人工衛星のような大きなものまで、可能性は無限大だ。同じくコウチュウの仲間であるタマムシや、カブトムシなどと一緒に見つかるカナブンの羽は、ニスを塗ったような金属光沢をもって輝いていて、その色は見る角度によって変わる。これは構造色といって、体の表面の微細構造によって光が干渉することでつくり出されているため、たとえ標本になっても色あせることはほとんどない。これをマネすれば、色あせない繊維や塗装技術に生かせるかもしれない」。

記述は、さらに、トンボやセミの羽の抗菌作用、ミツバチの巣のハニカム構造、シロアリのアリ塚にまで及んでいます。