榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本書を読み終えた瞬間から、私はリニア新幹線絶対反対論者になりました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2339)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年9月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2339)

慌てて、私の足元から水路に飛び込んだハネナガイナゴ(写真1~3)を見ていたら、平泳ぎのような動きで岸に戻ってくるではありませんか。ニホンカナヘビの幼体(写真4)をカメラに収めました。リンゴ(写真5)、ウンシュウミカン(写真6)、バナナ(写真7)、ハバネロ(写真8)、オクラ(写真9)、ジュズダマ(写真10)、コムラサキ(写真11、12)が実を付けています。バナナ、オクラ、ジュズダマは花も付けています。

閑話休題、『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震――「超広域大震災」にどう備えるか』(石橋克彦著、集英社新書)は、南海トラフ巨大地震が発生したら、大部分が地下トンネルのリニア新幹線は非常に危険だという、地震学者による警告の書です。

「JR東海(東海旅客鉄道株式会社)が2027年の開業を目指すリニア中央新幹線の品川・名古屋間は、2015(平成27)年12月から沿線各地で本格的な工事が始まった。超電導磁気浮上方式で最高設計速度は毎時505キロ、286kmを約40分で結ぶという。ただし、2021年4月末現在、南アルプストンネル(延長25km)の静岡工区は、大井川の流量減少やそのほかの環境問題によって、静岡県がまだ着工を認めていない」。

「南海トラフ巨大地震はリニア中央新幹線の建設中か、一部ないし全線開業中に発生する可能性が高い。開業している場合、運行中の時間帯であれば、必ず早期地震警報システムが作動して全列車が緊急停止し、乗客が避難することになる。その際、何カ所かで大きなトラブルが生ずるおそれがある。さらに、甲府盆地、山岳トンネル、名古屋付近、三重県、大阪付近をはじめとするあちこちで、列車や施設に大小の損傷が起きる可能性が高く、重大な被害の発生も否定できない。内陸の大地震と大きく違う点は、被害や故障が広域で同時多発し、システム全体が破綻することである。しかも、情報ネットワークの遮断により、中央の指令室が全体状況を把握できず、個々の列車も地底に孤立したままという事態になりかねない。品川駅でも、落下物で怪我人が出るとか、地下街で出火するとかの、リニアにとって本質的ではないが影響の大きい事故が起こらないとは限らない」。

「(南海トラフ巨大地震が)連発型の場合は、最初の大地震による被害の救援中に第二の大地震が起きて、二次災害が生じるおそれがある。現実には、南海トラフ沿いの東半か西半で一つ目の巨大地震が起こって大災害になったとき、もう一つの巨大地震がいつ発生するかはわからないので、リニア中央新幹線に限らず、救援・復旧にとって深刻な問題となる。最悪の場合には、何カ所かの大深度地下トンネルや山岳トンネルに閉じ込められた乗客を何日も救出できず、山岳トンネル内の被害や坑口付近の山体崩壊などでトンネル内の列車を引き出せないといった事態になるだろう。リニアの救助・復旧が重大な問題になるが、超広域が大震災に見舞われていて、東海道・山陽新幹線をはじめとするJR各社(東日本、東海、西日本、四国、九州)の在来型新幹線や在来線でも多数の被害が生じる。鉄道以外のインフラや都市・国土にも莫大な被害が出ていて、資金・労働力・機材・資材が不足するなかで、鉄道の復旧工事は在来型新幹線や在来ローカル線が優先されるだろう。したがってリニア新幹線の復旧は後回しになり、被害の程度によっては廃線もやむなしという判断を迫られるのではないだろうか」。

「要するに、リニア中央新幹線が南海トラフ巨大地震に対して無傷で、被災した東海道新幹線の代替として東西交通の大動脈を担って活躍するなどということは考えられない。むしろ、リニア新幹線がなければ起こるはずのない新たな災害を生み出し、超広域大震災の救援・復旧・復興を大きく阻害することになるだろう」。

著者は、今こそ、リニア計画を再考しようと呼びかけています。「リニア中央新幹線は南海トラフ巨大地震の強震動域および地殻変動域を通り、何本もの第一級活断層をトンネルで横切っていて、地球上でいちばん地震危険度の高い地帯に建設されているといっても過言ではない。しかも、明かり区間の多い在来型新幹線に比べて、救助・復旧の困難性が格段に高い」。

「人間にはやってよいことと、やってはいけないことがあると思う。いくつもの山塊に長大トンネルを掘って大電力で疾走するリニア新幹線は、やはり止めるべきだと言わざるをえない」。

本書を読み終えた瞬間から、私はリニア新幹線絶対反対論者になりました。