資本主義と民主主義が賞味期限を迎えつつあり、これからはAIの時代だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2407)】
ほぼ皆既月食をカメラに収めました。
閑話休題、『文学部の逆襲――人文知が紡ぎ出す人類の「大きな物語」』(波頭亮著、ちくま新書)の著者の主張は明快です。
「今、AIというテクノロジーが勃興して来ている。内燃機関と電力が人間を力仕事から解放してくれたように、AIは情報作業を肩代わりしてくれる。あと20年もすれば、現在人間が行っている仕事の半分以上はAIでできるようになる。人間は今の半分も働けば今と同じ財貨やサービスを得られるようになるわけである。そうなると、かつて農業や文字や電力がそうしたように、経済の仕組みや人々のライフスタイルはもちろんのこと、価値あるものと無価値なものの基準、幸福や豊かさの意味まで大きく変わることになる」。
「では、これからの新しい世の中でわれわれは、どのような自由を享受し、どのような豊かさを手にすることができるのか。新しい時代にわれわれは何を喜び、どのような生活を営み、人生の意味をどこに見出すのか。その答えを与えてくれるのが、新しい時代の姿を描き出す物語である。その姿を描き出すのは、哲学や美学、歴史や芸術といった人文の知性である」。
「哲学の用語に『大きな物語(Grand Narrative)』という言葉がある。言うなれば、世の中の基本的な価値観と是とされる社会のあり方を示す思想である。デカルトやニュートンが切り拓いてくれた近代の大きな物語は『理性と科学と進歩』であった。そして、その大きな物語を実現するための社会運営の方法論が資本主義と民主主義であった。賞味期限を迎えつつある近代の資本主義と民主主義を刷新し、AIが拓いてくれる新しい時代を迎えようとする今、社会はどのように構築され、人はどのように幸せな人生を生きるのかを示す『大きな物語』が描かれなければならない。その大仕事がなされた時こそ、新しい大きな物語が世の中を新しい時代に向けて動かし始める。今こそ、人文の力によって新しい大きな物語を描き出すべきである」。
物語は、人間にとって、どのような機能と性質を持っているのでしょうか。
①物語は人間が世界と自身を認知する方法論である。
②集団は物語の共有がなされることで組織化される。
③物語(フィクション)は社会を動かす強い力を持つ。
④物語には普遍的な定型のパターンがある。
⑤多くの人が共感する物語のパターンは、脳のメカニズムに起因するため強い普遍性を持つ。