榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

古代から現代に至る哲学の全体像が学べるガイドブック・・・【情熱的読書人間のないしょ話(615)】

【amazon 『大学4年間の哲学が10時間でざっと学べる』 カスタマーレビュー 2016年12月14日】 情熱的読書人間のないしょ話(615)

書斎に、中国湖北省の恩施(エンシー)大峡谷の石柱に3名のロック・クライマーが登った時の写真を掲げています。高所恐怖症の私は、いつも身震いしながら眺めています。

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閑話休題、『大学4年間の哲学が10時間でざっと学べる』(貫成人著、KADOKAWA)は、古代から現代までの哲学の全体像の概略を把握するのに役立ちます。

20世紀の哲学については、このように説明されています。「20世紀の哲学は、科学を積極的に肯定する英米の言語分析哲学、科学や戦争によって脅かされる人間存在の意味を追求するドイツ、フランスの現象学や実存哲学、従来の哲学とは、まったく新たな地平へと突破口を求めるフランスの構造主義やポスト構造主義という、3つの潮流にわかれました」。

上記の2番目の潮流は、さらに枝分かれしていきます。「こうした土壌からフッサールの現象学が生まれました。そして、実存に直目したハイデガーはサルトル、心理学などをもとに知覚や身体を具体的に分析したメルロ=ポンティ、さらに、絶対的他者にもとづく倫理を提唱したレヴィナスなどが続きます。認識・行為・主体の分析を糸口に、世界そのものの構造を綿密に分析し、さらには存在の意味へと迫ろうとする人々でした」。

ハイデガーの哲学は、こう解説されています。「自分の死は自分で引き受けるしかなく、誰にも代わってもらえません。しかも、だれもが例外なく『死への存在』です。自分の死と向き合うとき交換不可能な本来の自分を回復することができるのです」。

ポスト・モダンは、こう位置づけられています。「19世紀後半、世界各地に同時多発した『モダン(近代)』を支配したのは進歩史観です。人間の自律や価値の普遍性を謳うカントの啓蒙主義、人間解放を目指すマルクス主義、『自己実現』を促すロマン主義など、ここかしこで『大きな物語』が語られました。1990年代はじめ、冷戦が終結すると、こうした理想、また、進歩そのものの信憑性が失われ、『大きな物語』の死が宣告されます。『ポスト・モダン』に突入したのでした」。

挫折した経験のある哲学の勉強に再挑戦するには、恰好な一冊です。