最貧国エチオピアでのフィールドワークを通して、「うしろめたさ」について考える・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2420)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年12月2日号】
情熱的読書人間のないしょ話(2420)
東京・文京の小石川後楽園は、紅葉が見頃です。
閑話休題、『うしろめたさの人類学』(松村圭一郎著、ミシマ社)は、最貧国エチオピアでのフィールドワークを通して、「うしろめたさ」について深く考えようという試みです。
「ここ(エチオピア)では日本にいると覆い隠されてみえない『格差』を突きつけられる。自分が健康であること、ホテルの宿代が、少年が1年かけても絶対に稼げない額であること、いつでも簡単に空腹を満たせること、すべてが『うしろめたさ』を喚起する。・・・格差を目のあたりにすると、なにかしなければ気持ちがおさまらなくなる。こうして引き出された行為は、自分の『うしろめたさ』を埋めるものでしかない。結果的に公平さにつながるかわからないまま、行為せずにはいられない。・・・市場や国家という制度によって分断され、覆い隠されているつながりを、その線の引き方をずらすことで、再発見すること。そしてそこに自律的な社会をつくりだすこと。それが、この本でたどりついたひとつの結論かもしれない。・・・人と『つながる』ことは、その人の生の一部を引き受けることを意味する。ときには市場/交換の力をつかって、関係を断ち切ることも必要になる。そのバランスをとるためにも、共感の回路をうまく開閉できたほうがいい。いまは、これまで築かれてきた境界線を試行錯誤しながら引きなおしていく時代なのだと思う。市場や国家を否定する必要はない。過度な批判は、むしろ市場や国家を、自分たちの手の届かない『怪物』に仕立て上げてしまう。自分たちがその手綱を握っていることを意識しながら、一人ひとりの越境行為によって、そこにあらたな意味を付与し、別の可能性を開いていく。それが重要だと思う」。