榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

仕事面では鮮やかな男の内面の孤独・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2526)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年3月18日号】 情熱的独y素人間のないしょ話(2526)

モクレン(シモクレン。写真1~3)が咲いています。我が家の庭の片隅で、ユキヤナギ(写真7)が咲き始めました。

閑話休題、短篇集『鮮やかな男』(城山三郎著、角川文庫)に収められている『鮮やかな男』は、仕事面では鮮やかな男の内面の孤独が描かれています。

大手銀行の支店長代理の竹原は、再婚した妻・千枝の妹・京子と秘密の関係を持っています。「京子の笑顔、とりわけ二人だけのとき竹原に向けてくる甘えを帯びた笑顔が、いとおしい。その笑顔が他の男の胸にかくれてしまうかと思うと、口惜しく、またさびしかった。だが、そのさびしさ以上に、ほっとする思いもあった。二人の間の秘密を二人だけのものにして、そのまま嫁いで行ってくれることに、救われたという思いがあった。千枝とは同じ姉妹とは思えぬやさしさ、そして聡明さが、竹原には嬉しい――」。

「いつの間にか竹原は、銀行内でパワー・エリートと目される身になっていた。それは、竹原にとって、ただ心外とだけは言いきれなかった。『パワー・エリート』という言葉の中には、現実くささや所帯くささに背を向けるものがある。家庭を忘れさせてくれるものがある。竹原は、進んでパワー・エリートの群れへ身を投じた。その意味では、破れかぶれのパワー・エリートであった」。

「あの連中は甘かった。見透しが甘く、取り組み方も甘かった。力を出しきって生きていなかった。その報いが、(彼らの)いまの境遇なのだ。あいつらは、パワー不足だ。パワーのない人間が鮮やかに生きられるはずがない――。そのとき、ふいに、左側から車が追い越しをかけてきた。接触しまいと、竹原はあわてて右へハンドルを切ったが、濡れた路面に車輪がスリップした。眼の前へ対向車の白金色のライトの車がとびこんできた」。部下の家が火事という電話を受けた竹原は、酒気帯び運転にも拘らず駆けつけようとして、事故を起こしてしまいます。

短篇だが、重い内容の作品です。