榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「すぐに効く読書」よりも、「ゆっくり効く読書」を!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2530)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年3月22日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2530)

プルモナリア‘ブルー・エンサイン’(写真1)が咲いています。オモチャカボチャ(写真2)が盛られています。

閑話休題、『人生の土台となる読書――ダメな人間でも、生き延びるための「本の効用」ベスト30』(pha著、ダイヤモンド社)には、何度も頷いてしまいました。

著者は、自身の体験から、「ゆっくり効く読書」を勧めています。「『すぐに効く読書』が今まで知っている枠組みの中で役に立つものだとしたら、『ゆっくり効く読書』は、その枠組み自体を揺さぶって変えてくれるものだ。●今までに見たことも無いような、新しい世界を教えてくれる読書。●読む前と読んだあとで、価値観がガラッと変わってしまうような読書。●人生の選択肢を増やして、今の状況からの脱出口を作ってくれる読書」。

「今の時代は、単に何かを知っているだけではすぐに時代遅れになってしまう。知識を詰め込むだけではなく、根本的に物事を考えるための価値観や枠組みを持つことが必要だ。そして、根本的に物事を考えるための価値観や枠組みを手に入れるためには、『すぐに効く読書』ではなく『ゆっくり効く読書』が必要なのだ。●時代が変化しても価値を失わないような『知識や思考能力』。●世間の動きに流されずに、自分の考えを持って生きるための『自信』。●信じていいものと信じてはいけないものを見分けるための『バランス感覚』。――『ゆっくり効く読書』は、そんな人生の土台を得るための読書だ」。

「物事を考えるやり方を、僕は橋本治に学んだ。本をたくさん読んでも、書いてあるこいとを丸覚えするだけでは意味がない。本の著者に学ぶべきことは、単なる知識ではなく、そこに至るまでの考え方や姿勢なのだ」。著者・phaのお薦めは、橋本治著『恋愛論(完全版)』です。

「人が挫折する話を読むのが好きだ。ニュースや映画などでは、勝った人間の話ばかりが取り上げられる。だけど、その一人の勝者の裏には、負けて悔しい思いをしている人がたくさんいるはずだ。僕は、そちらのほうに興味が湧く。努力をしていた人間が勝つのは、ベタすぎてあまり深みがない。『努力をしてきたにもかかわらず、勝てなかった』。これが人生だと思う。生きるというのは大体、挫折をすることだ。勝ちよりも負けのほうにこそ、人間の複雑で深い感情が表れるものだし、勝つことよりも負けることのほうが、人間を成長させる。ずっと勝ってばかりで挫折を経験していない人間とは、あまり仲良くなりたくないなと思う」。phaのお薦めは、大崎善生著『将棋の子』です。

「ユーモアというのは。現実に立ち向かうための武器だ。何かつらいことがあったときに、怒って正面から戦う、というのも一つの選択肢だ。しかし、怒るのではなく、『ちょっと視点をずらしてユーモアをかぶせる』というのも、立ち向かい方のひとつだ。こだまさんは、ユーモアでつらい出来事を受け流す達人だと思う」。phaのお薦めは、こだま著『ここは、おしまいの地』です。