榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

説明に必要なのは「時間感覚」、「要約力」、「例示力」・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2628)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年6月27日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2628)

湿地帯のあちこちで、ウラナミアカシジミ(写真1~4)に4頭も出会うことができました。同じ湿地帯で、アカシジミ(写真5~8)、ヒメジャノメ(写真9)、コミスジ(写真10)をカメラに収めました。ハス(写真11~14)が咲き始めました。

閑話休題、『頭のよさとは「説明力」だ』〈齋藤孝著、詩想社新書〉は、「説明力」を身につけることの重要性を強調しています。「現代において上手な説明ができるということは、まわりの人を幸せにします。簡潔でわかりやすい説明をすることで、最少の時間で最大の意味をやり取りできれば、多くの時間を節約することができるからです」。

「説明力に、その人の知性が垣間見える」というのです。

説明力を飛躍的に向上させるための方法が具体的に示されています。

●説明に必要なのは「時間感覚」、「要約力」、「例示力」
「時間感覚」とは、最小限の時間でズバッとわかりやすい説明をすることです。「わかりやすい説明とは、ヘリコプターで目的地に直接降りるようなものです。まず、事の本質、ポイントから明示して、てきぱきとした話し方、簡潔な構成で、最低限の時間で完結するのが上手な説明です」。

●ポイントは3つに絞る

●上手な説明の基本フォーマットを活用する
①まず、一言で言うと○○です(本質を要約し、一言で表現。キャッチフレーズ的)
    ↓
②つまり、詳しく言えば○○です(要約したポイントを最大で3つ、重要度や、聞き手の求める優先順位を加味して示す)
    ↓
③具体的に言うと○○です(例示。エピソード、自分の体験などで補足)
    ↓
④まとめると○○です(これまでの説明の最終的なまとめ)

●「A41枚の構成力」で説明力は向上する

●問いかけを説明の推進力にする

●上手な説明は時系列にこだわらない
「丁寧に説明しよう、正確に説明しようという意識が強い人のなかには、時系列にこだわりすぎて、最初から順を追って事細かに説明していく人がいます。しかし、こういった説明は多くの場合、まわりくどいだめな説明になってしまうことが多いものです」。

著者・齋藤孝の説明力のレベルの高さを見せつけられたのは、「子どもにわからせるように説明する」実例です。「たとえば、ハイデッガーが著書『存在と時間』で言いたかったことを、小学校4年生にわかるように説明してみましょう。そうするとまず、言葉づかいが変わってきます。ハイデッガー特有の用語を使わずに、本質をわかりやすく説明しなければならなくなります。『人間というのは時間がとても大事な生き物です。なぜなら、人間の生きる時間は限られているからです。他の動物は生きて、生きて、結果、死ぬわけで、そんなに死ぬことばかりを考えるわけではありませんが、人間は<自分がいつか死ぬ>ということをわかって生きているところが違います。死を意識して生きているからこそ、いずれ死ぬのであれば、もう少し充実して生きようとか、もっと全力を尽くして生きようとか、そういうふうになるのが本来の人間の姿ではないかというふうに言ったのが、ハイデッガーなのです』。『だから、この生きている間にできるだけ自分らしい人生を生きようと、自分で何かを撰び取って、その選択の連続で私たちは人生をつくっています。たとえば、サッカー部に入ろう、野球部に入ろうというのもその選択の一つです。私たちは無限に時間が続くなかで生きていくのではなく、限られた生という時間のなかで、それを意識しながら生きていく存在なのです』。こう説明すれば、小学校4年生ならだいたいはわかります。このくらいのレベルに合わせて説明するためには、内容を平易な言葉に言い換えなければなりません。そして、意味を言い換えるということは、その本質を理解していなければできないことです」。

説明力を身につけたい人にとって、大いに頼りになる一冊です。