榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

モーツァルト、西郷隆盛、夏目漱石の年収は?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2656)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年7月25日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2656)

千葉・柏の「あけぼの山農業公園」では、ヒマワリ(写真1~12)が咲き競っています。なお、写真3は、背丈が低い ‘ジュニアスマイル’ 、写真3以外は、背丈が160cmを超える ‘ハイブリッドサンフラワー’ という品種です。クマバチ(キムネクマバチ。写真11)が吸蜜しています。オオガハス(写真14、15)が咲いています。

閑話休題、『偉人の年収――世界史・日本史42人の金銭事情』(堀江宏樹著、イースト新書Q)で、とりわけ興味深いのは、「ギャンブラーの才能もあったモーツァルト」、「年俸1億2000万!? 裕福だった西郷隆盛」、「朝日新聞の社長より高給待遇だった夏目漱石」――の3つです。

●モーツァルト
「音楽学者ギュンター・バウアーによると、モーツァルトは晩年の10年間(1781~1791年)、平均4500グルデンもの年収があったそうです。これが事実なら、『素晴らしい音楽を残しながらも、凡庸な聴衆に理解されずに貧困にあえぐ天才モーツァルト』という定番のイメージの半分くらいは正しくないようですね。1350万~1800万円相当の年収を得て生活していたことになりますから・・・(1グルデン=3000~4000円で計算)。・・・高収入にもかかわらず、頻繁に知人に泣きついて借金を繰り返し、結果的にはかなりの借金を残している。しかし、本業はそこまでパッとはしない。そんなモーツァルトの謎は、『彼がギャンブル中毒だったのでは』という推論でしか解けない気がするのです、一時的には大勝ちして多額の現金を手に入れているのに、またハデに賭け、大負けしてすべて失う。借金してギャンブルをする生活を続け、そのまま死んでしまったわけですね」。

●西郷隆盛
「明治5(1872)年に陸軍大将になった西郷の月給は500円。当時の1円=現代の1万~2万円とされるため、多く見積もれば月給1000万円、賞与など抜きでも年収1億2000万円だったといえるのです。本書では基本的に明治時代の1円=現代の1万円として計算していますが、その場合でも年収6000万円。西郷は高給を得ながら、ほかの役人の贅沢な暮らしぶりを批判していたのでした。・・・明治以降の西郷隆盛を『清貧の士』と呼べるのは、金遣いがさらに荒かった新政府の役人たちと比べた場合だけ。貧しい時代が長かった反動かもしれませんが、一般的には『贅沢好き』というしかない生活を、西郷は家族ともども送っていたと推定されるのです」。

●夏目漱石
「大学勤めの給料に比べると作家としての収入は少ないのですが、『吾輩は猫である』の経済的な成功に注目した東京朝日新聞社から、『専属作家にならないか?』というオファーがきます。こうして、明治40(1907)年以降の漱石は、嫌いだった教師生活から完全引退できました。朝日新聞社専属作家として給与をもらいながら、新聞小説を書く日々が始まります。執筆ノルマなど気詰まりな制約はあったにせよ、待遇は実によく、現代の貨幣価値でいえば月給は200万円、年2回のボーナスが600万円。年収は3000万円にもなりました。朝日新聞社の社長よりも高額だったことには驚いてしまいます。しかも、この3000万円は作家・夏目漱石の『基本給』にすぎず、印税収入もありました。どの出版社で連載内容を単行本化してもよい契約で、漱石には3000万円+αの年収が約束されたのです」。