榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

松本清張を理解するための5つのキーワードとは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2709)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年9月16日号】 文豪ナビ 松本清張

ジャコウアゲハの雄(写真1、2)、サトキマダラヒカゲ(写真3)、ヒカゲチョウ(写真4、5)、ツマグロヒョウモンの雄(写真6)、モンキチョウ(写真7)、ヒメウラナミジャノメ(写真8~12)、ダイミョウセセリ(写真13)、イチモンジセセリ(写真14)をカメラに収めました。我が家の庭に、ヤマトシジミの雌(写真15)がやって来ました。庭の片隅で、シロバナマンジュシャゲに続いてヒガンバナも咲き始めました(写真16、17)。

閑話休題、『文豪ナビ 松本清張――人間の果てなき闇を追い続けて。』(新潮文庫編、新潮文庫)は、松本清張ファンにとっては堪らない一冊です。

清張を知るための5つのキーワードが挙げられています。
①社会派――特殊な舞台で奇抜なトリックを駆使する「探偵小説」から、一般社会におけるリアルな事件を描く「推理小説」へ――。清張の登場がミステリーを変えた。「私は、動機にさらに社会性が加わることを主張したい」。
②破滅する男女――勤め先から巨額の金を横領する女、成功を渇望しながらも報われない男・・・。清張作品の男女は誰にも言えない秘密と苦悩を抱えている。「恐るべき女です。頭脳も冷たく冴えていますが、血も冷たい女です」。
③鉄道旅――長距離移動といえば鉄道だった時代。時刻表トリックや、寝台特急に乗って夫を探す主婦、中央線や西武線沿線から都心に通勤するサラリーマンなど、清張作品に鉄道は欠かせない。「地図と時刻表とを傍に置いて、小説を考えているときが、私にはいちばんたのしい時である」。
④映画とドラマ――清張作品は映像化との相性もよく、映画とドラマを合わせて400本以上が作られている。自身も無類の映画好きだった清張は、1978年に野村芳太郎らと共に制作会社「霧プロダクション」を設立した。「映像が視野に訴える力以上のものは、どうも巧く出せないわ」。
⑤昭和を暴く――『日本の黒い霧』や『昭和史発掘』などのノンフィクション作品を通じて、清張は「昭和」という時代に肉迫した。「私は自分のやり方を、あたかも歴史家が資料をもって時代の姿を復元しようとしている仕事にまねた」。

「おすすめ読書コース」が、参考になります。
●推理長篇=『点と線』→『砂の器』→『黒い福音』→『球形の荒野』→『かげろう絵図』→『神々の乱心』
●短篇=『或る「小倉日記」伝』→『天城越え』→『一年半待て』→『家紋』→『顔』→『鬼畜』→『黒地の絵』→『カルネアデスの舟板』
●歴史・時代小説=『西郷札』→『無宿人別帳』→『大奥婦女記』→『彩色江戸切絵図』→『乱灯 江戸影絵』→『天保図録』→『西海道談綺』→『私説・日本合戦譚』
●ノンフィクション=『日本の黒い霧』→『現代官僚論』→『昭和史発掘』
●古代史=『陸行水行』→『古代史疑』→『天皇と豪族(清張通史4)』→『私説古風土記』→『ペルセポリスから飛鳥へ』

「私の発想法」と題した講演会で、清張は、悪妻がいたからこそ、岡倉天心、森鴎外、ピランデルロらは傑作を残すことができたと述べています。「しからば、そんなことを言うおまえはどうかという質問が必ずおありになると思いますが、私の場合は、幸か不幸か、女房は必ずしも良妻とは申しませんけれども、それほど悪妻でもない。したがって、私は永久に文豪にはなれないわけであります」。

森村誠一の清張評――「松本清張は常に反体制を貫き通し、国民作家でありながら、お上から褒賞されたことは一度もない。お上のちょうちん作家として褒賞されるよりは思想・表現の自由を守り抜いた孤高の作家の偉大さが清張に結晶していると言える」と、郷原宏の清張評――「家庭が貧しかったため上級学校へ進めず、十代の半ばから社会に出て下積みの生活を余儀なくされてきた清張は、この敗者の側に寄り添い、敗者の視点から時代と社会を描くことによって、空前の社会派推理小説ブームを巻き起こしました。そのとき、ルサンチマンはこの作家の身についた姿勢であると同時に、この時代の光と闇を描く有力な文学的武器ともなったのです。この世から『悔しい人』がなくならないかぎり、清張文学は読み継がれることでしょう」が、心に残ります。