憧れの存在である柳生博を偲びたくて、本書を手にしました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2808)】
我が家の庭のマンリョウの実を目当てにやって来たジョウビタキの撮影に失敗(涙)。餌台「空中楽園」にやって来るメジロ(写真1~10)、「カラの斜塔」にやって来るスズメ(写真8、9)、シジュウカラ(写真10)たちを見ていると、時間が経つのを忘れてしまいます。
閑話休題、私が柳生博という人物に興味を抱いたのは、1984年に出版された『森のやすらぎ――ぼくの心身リフレッシュ法』(柳生博著、光文社、カッパ・ブックス)を読んだ時でした。彼が愛する八ヶ岳にも関心が及び、企業人時代の夏休みや冬休みには、しばしば八ヶ岳を訪れたものです。
今回、憧れの存在である柳生博を偲びたくて、『森に暮らし、鳥になった人。』(柳生博著、東京ニュース通信社)を手にしました。
「八ヶ岳南麓には天然記念物にもなっている、ヤマネがたくさんいます、ヤマネは鼠ぐらいの大きさで、リスのようなふさふさのしっぽを持った可愛らしい小動物です。実はこのヤマネも僕の友だち。なにしろ、同じ屋根の下で一緒に暮らしたほどですから。今は若者たちの家になっている『下の茶屋』で生活をしていた頃、家の中にヤマネが巣を作ったんです」。山梨の西沢渓谷の山林道でヤマネに遭遇して以来、私もヤマネは大好きです。
「日本というのは、氷河期に氷に覆われなかったということもあってとても豊かな、特殊な植性を持っています。それは、新緑や紅葉の色の数を見ても分かるように、本当に複雑多岐にわたっているのです。・・・四季に恵まれたこの気候が豊かな国土を造り、植物たちにとって居心地の良い世界を提供しているのでしょう。だから、学んでも学んでも、完全にマスターするなんてことはあり得ないんです。それほど深いものなのです、日本の植物は」。同感です。
「生き物って凄いんだという畏れ、そして自分に対する畏れ。自分も生き物なんだという。なんでも、そんなに簡単に分かってしまっては面白くない。オオムラサキがエノキにしか卵を産まないという、ほんとうのことは絶対分からないと思う。分かってたまるかって、僕は同じ生き物として言いたい」。その心意気、いいなあ。
「リタイアする人たちは、今までの人生の中で得てきたいろんな知識や情報、処世術などを身に付けているわけです。しかし、そんな人たちにも足りないものがたったひとつだけあります。それは、生き物の身になって考えるトレーニングです。僕はそのトレーニングこそが、今後の人生を豊かに送るための鍵になるはずだと思っています」。
「八ヶ岳に抱かれながら、生き物と共に暮らす。それは最高の生き方。 心安らぐ里山は、人と生き物が共に生きる日本の原風景なのだ。 自然の中の生き物として認められ、この八ヶ岳の懐に抱かれて眠りたい」。
こんな文章もあります。「山口百恵さん。実は僕、現役時代の彼女にはあまり興味なかったんです。ところが、コマーシャル撮影でカナダに行った時、スタッフのウォークマンで聴いた彼女の『イミテーションゴールド』は衝撃的でした。バロックと同じくらい官能的で、ドラマチックで、それでいて僕らの感情を移入する隙間がいっぱいあって。向こうからは何も強要してこない、ある種、無表情でサラサラ流れていく。支配しない音楽――。これがバロックと山口百恵の共通点」。山口百恵とバロックが好みという点も、私と一緒です。
本書を読んで、私にとって柳生はますます憧れの人になりました。