本書のおかげで、どうあっても読まなくてはと思う書籍が見つかった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2856)】
首都圏としては珍しく雪が降り寒い一日でした。
閑話休題、『危機の読書』(佐藤優著、小学館新書)で取り上げられている著作の中で、これはどうあっても読まなくてはと思った書籍があります。
『人新世の「資本論」』(斎藤幸平著、集英社新書)が、その本です。
「個人的には善意であると思って行っている行動が客観的には構造悪を温存してしまう。このような状況をマルクスは疎外と名づけた。斎藤氏は21世紀に疎外論を甦らせようとしている。・・・共産党や旧社会党、新左翼の政治的影響を受けないところでマルクス主義を現代に活かそうとする斎藤幸平氏が登場したのである。斎藤氏は、アメリカとドイツでソ連・東欧型のスターリン主義(ロシア共産主義)とは別の西欧マルクス主義の知的伝統を十分に吸収して、人間と自然の循環という巨視的観点でマルクスを扱い、日本と世界を危機から脱出させ、格差を解消し、人間の自由を実現しようとしている」。
「斎藤氏は唯物史観も労働力商品化も重視しない。斎藤氏にとって最重要なのは地球という環境である。そして、マルクスの環境理論を最晩年のマルクスの思想から掬い出そうとする。・・・マルクス主義を生産力至上主義から解き放ち、もっと巨視的に『人間と自然の物質代謝』の視座から再編することを斎藤氏は考えている。これは、生産力が歴史を突き動かしているというイデオロギーを脱構築し、唯物論の立場から徹底的にマルクスを再解釈するということだ。・・・問題は、人類が地球生態系を破壊することができる破壊的な技術力を身に付けてしまったことだ。その破壊性は資本家階級、地主階級、労働者階級の中にも内在している。だから表面的には地球生態系の危機のように見える。しかし、その本質は資本家による環境(地球)に対する収奪から生じているのである。低成長経済によってこの構造を転換し、人類と地球生態系を救い出すというのが斎藤氏の戦略だ」。