榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本書のおかげで、曖昧模糊としていたロヒンギャの全体像が見えてきた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2017)】

【amazon 『ロヒンギャ 差別の深層』 カスタマーレビュー 2020年10月22日】 情熱的読書人間のないしょ話(2017)

ムベ(写真1)、カキ(写真2)、レモン(写真3)、トキワサンザシ(写真4、5)、カクレミノ(写真6)、マユミ(写真7)、ナンテン(写真8)、フウセンカズラ(写真9)、ガマズミ(写真10)、フユサンゴ(写真11)、ヘチマ(写真12)、カボチャのバターナッツという品種(写真13)、ハロウィンカボチャ(写真14)が実を付けています。

閑話休題、『ロヒンギャ 差別の深層』(宇田有三著、高文研)のおかげで、曖昧模糊としていたミャンマーのロヒンギャの全体像が見えてきました。

新聞、テレビ等で取り上げられているロヒンギャ問題とは、何なのでしょうか。「●『ロヒンギャ問題』とは、およそ半世紀続いた軍事独裁政権のミャンマーにおいて、上座部仏教徒が多数派を占める社会で、時の軍事独裁政権がその権力基盤を強化するため、人びとのイスラームに対する差別的な潜在意識を刺戟して作り出した政策の結果生まれた問題である。その差別政策の結果が長年放置され、この問題が宗教迫害や『民族紛争』として伝えられるようになってきた。●ミャンマーを長年取材してきた筆者の経験からいえることは、ロヒンギャたちが望んでいるのは、『ロヒンギャ民族』と呼ばれることではなく、ムスリムとしてのアイデンディティを持った人として、安心して暮らすことである」。ロヒンギャの人たちはミャンマー軍政から迫害を受けて隣国バングラデシュに避難し難民となったが、その後の民政移管後も解決されないまま今日に至っているのです。

ミャンマーには出自の異なる6つのムスリムがいるが、ロヒンギャはバングラデシュからの「ロヒンギャ・ムスリム(ベンガル系)」です。「軍政下で、ロヒンギャたちは隣国バングラデシュからの不法移民と見なされてきました。それゆえ、国民として認められていません。ミャンマー政府は軍政期から一貫して、ロヒンギャ・ムスリムは国民じゃないから保護する義務はない、できるだけ早くバングラデシュに帰って欲しい(帰したい)という態度をとり続けています」。

一方。「バングラデシュ政府は、ロヒンギャというのは、ミャンマーに暮らしてきた少数派のムスリムで、1982年のビルマ(現・ミャンマー)の市民権法(国籍法)によって国籍を剥奪されたミャンマー出自の人びとで、軍政の迫害によりその一部がバングラデシュに避難してきた、と説明しています」。

これに対して、著者は、「ロヒンギャは、ミャンマーに暮らすムスリムの中の一つ(ベンガル系のロヒンギャ・ムスリム)で、宗教的な少数者であり『民族』ではない。だが、数世代にわたって実際にミャンマー国内で暮らしてきたのは事実であり、国民として保護すべき対象である」という立場を取っています。

ロヒンギャ問題を解決してくれるだろうと期待したアウンサンスーチーに対する失望が世界中に広がっています。私もその一人であるが。著者は、このように反論しています。「『ロヒンギャ問題』について、外国のメディアや援助機関、人権団体などによるスーチー氏に対する一方的な批判は、過剰ではないかと筆者は感じている。いわゆるスーチー叩きである。それらの批判者は、ほんの数年前までミャンマーが世界に悪名を轟かせた軍事独裁国だったということを忘れている。半世紀に及んだ軍政に対抗してきたスーチー氏を、闘う人権活動家だと過剰にみなしてきた国際社会こそ、その偏った見方を払拭すべきなのである。スーチー氏は、国内外の事情に通じた政治家である。武力を占有している軍部を批判せずに、スーチー氏を批判してもミャンマー国内の政治は動かない。国外の批判者は、その批判の矛先を、まずは軍部に効果的に向けなければならない」。著者の指摘に、思わず頷いてしまいました。