榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

アルフレッド・アドラー自身の著作に挑戦して、分かったこと・・・【あなたの人生が最高に輝く時(72)】

【amazon 『アドラー 人生の意味の心理学』 カスタマーレビュー 2017年1月1日】 あなたの人生が最高に輝く時(72)

アドラーの著作に挑

アドラー 人生の意味の心理学――決めるのは、あなたです』(岸見一郎著、NHK出版)では、アルフレッド・アドラー研究の第一人者・岸見一郎によって、アドラー自身の著作『人生の意味の心理学』が分かり易く解説されている。

アドラー心理学の特徴は、2点に要約することができる。すなわち、①あらゆる対人関係は「縦」ではなく「横」の関係にあり、人と人とは対等である、②あらゆる悩みは対人関係の悩みである――というのだ。

目的論

アドラー心理学を理解するには、アドラーが使用する用語の意味と使い方を知る必要がある。

「目的論」は、こう説明されている。「アドラーのいう『目的論』では、ある人と関係を続けたくないと思うことが、(相手の)欠点を見つけることの目的です。長所を見つけ、好きになるのは、その人との関係を始めたいという目的があったのです。なぜ好きになったか、嫌いになったかという原因(理由)を相手の中に見つけようとすることが、アドラーの言葉のなかにある『経験の中から目的に適うものを見つけ出す』ということです。関係を始める、あるいは、関係をやめることの理由を、自分の決心を後押ししたり、正当化したりするために探さなければならなかったのです。・・・何かによって自分の今の生き方や行動が決定されていると見たい人は、そのように見ることで自分の責任を曖昧にしたいのです」。

優越性の追求

「優越性の追求」については、こうだ。「私たちは善を追求していますし、今よりも優れた存在になりたいと思いながら日々を生きています。アドラーはこれを『優越性の追求』と呼びました。・・・アドラーは、このような優越性の追求を人間の普遍的な欲求と考え、次のようにいっています。<すべての人を動機づけ、われわれがわれわれの文化へなすあらゆる貢献の源泉は、優越性の追求である。人間の生活の全体は、この活動の太い線に沿って、則ち、下から上へ、マイナスからプラスへ、敗北から勝利へと進行する>」。私は、この人間の向上心こそアドラー心理学の中核理念だと考えている。

優越性の追求を、他人との「競争」だと思ってはいけない。「アドラーは、人間の悩みはすべて対人関係の悩みであると考えていますが、対人関係の軸に『競争』があると思っている限り、人は対人関係の悩みから逃れることはできません。・・・アドラーがいっている『人生の課題に直面し、それを克服する』ことが優越性を追求するということの意味です。しかし、課題に直面し、『真に』それを克服できる人は、ただ自分のためにだけ優越性を追求するのではなく『他のすべての人を豊かにする』、つまり、幸福にするということ、『他の人も利する』(他の人にとっても『善』になる)仕方で『前進』する人だといわれています」。

優越コンプレックス

「優越コンプレックス」とは何か。「自分が優れていることをことさらに強調し、それを他者に誇示しようとする人にとっては、実際に優れているかどうかは問題ではありません。彼らには、ただ『他者よりも優れているように見えること』が重要であり、そのために絶えず他者の評価を気にかけ、他者からの期待に応えようとするのです。そのような人は他者からどう見られているかを気にしますが、実際には、自分が思っているほど誰も自分に期待も注目もしていないはずです」。あなたが思っているほど、誰もあなたに期待していないというのだ。

共同体感覚

「共同体感覚」とは、どういうものなのか。「『他者と結びついている』ということが、アドラーのいう『共同体感覚』の意味です。・・・他者を仲間と見ている人は、その仲間である他者に貢献し、貢献感を持つことで自分に価値があると思えれば、対人関係に入っていく勇気を持つことができます。生きる喜びや幸福は他者との関係からしか得ることはできません。アドラーは以上のことを『自分自身の幸福と人類の幸福のためにもっとも貢献するのは共同体感覚である』と説明しています」。

●競争する相手は他者ではなく、自分自身である、●他者の承認は必要ない、●他者と協力しなければ超えられない課題もある――ことを学ぶことによって、私も一歩、前進することができた。