榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ぐんぐん近づきつつあるUX時代――我々はどう対応すればいいのか・・・【続・リーダーのための読書論(73)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2017年3月6日号】 続・リーダーのための読書論(73)

近未来

UXの時代――IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか』(松島聡著、英治出版)には、ぐんぐん近づきつつある近未来の姿が描き出されている。

テクノロジーの進化と普及、所有から共有への価値観の移行は、否応なく企業のあり方、そして個人の働き方を根本から変えてしまうというのだ。

近未来を考えるときのキーワードとなる「シェアリング・エコノミー」「フリー・エコノミー」「UX」とは何か。

シェアリング・エコノミー

ウェブ・サービスのエアビーアンドビー(Airbnb)や配車サービスのウーバー(Uber)などが、モノを買い所有する経済から、必要なときに必要な分だけ利用するシェアリング・エコノミー(共有型経済)への転換を告げているというのだ。

フリー・エコノミー

テクノロジーの進化・普及と、生産・流通・販売の効率化により、製品の限界費用(利益をぎりぎり確保できる限界のコスト)が下がり続け、ゼロに近づいていくと、フリー・エコノミー社会が到来する。

シェアリング・エコノミーやフリー・エコノミーといった消費行動の変化はテクノロジーの進化に支えられている。例えば、エアビーアンドビーやウーバーのビジネスは、アマゾンなどが提供するクラウド・サービスをプラットフォームとして急速に広がっている。

UX

UX(ユーザー・エクスペリエンス、顧客体験)の時代が近づきつつある。これまでの企業はユーザーのニーズを把握して、そのニーズを満たす商品やサービスを提供してきたつもりでいるが、それは飽くまで設備や組織といった企業のリソースの都合で生み出してきた商品・サービスに過ぎない。これからの企業はそうした既存の枠組みから脱却し、ユーザーが何に感動するか、価値を得るか、つまりUXをいかに最大化するかを基準に、ビジネス・モデルを再構築しなければならない。

対応策

来るべきこれらの変化に対応するには、どうすればいいのか。「今勤務している会社が敗れ去るにしろ、生き残るにしろ、人材が仕事を続けていくには、会社に従属・依存するのではなく、UXの最大化に貢献できるスペシャリスト、どこでも通用するプロフェッショナルとして会社にもたらす価値・利益を大きくしていくしかない。会社がUX最大化に挑戦せず、プロフェッショナルやスペシャリストを必要としていないなら、UXで勝負しようとしている会社に一刻も早く移ったほうがいい。企業も生き残りたければプロフェッショナルやスペシャリストが活躍できるプロジェクトでUXの最大化にチャレンジしていくしかない」。

著者は、企業の中で自分の能力が生かされていないと感じている人には、起業を勧めている。特に、これまでにない市場を生み出せる新しい製品やサービスが企画できるのに、会社の古い仕組みや価値観に阻まれている人は、勇気を持って会社の外でその企画を試してみるべきだというのである。「今ほど起業しやすい時代はないと言ってもいいだろう。・・・一番明快で成功の可能性が高く、日本の産業・社会にとってメリットが大きいのは、起業する人が増えることだ」。