秘すれば花、秘せねば花なるべからず。・・・【ことばのオアシス(番外扁その3)】
【amazon 『風姿花伝』 カスタマーレビュー 2013年8月12日】
ことばのオアシス(番外扁その3)
秘すれば花、秘せねば花なるべからず。
――世阿弥
世阿弥の『風姿花伝』(野上豊一郎・西尾 実校訂、岩波文庫)の一節。 「花」とは何か。「花は、見る人の心に珍しきが花なり」、「人の心に思ひ(い)も寄らぬ感を催す手立、これ、花なり」と記されている。持てる芸の全てを見せてしまっては、観客に飽きられる。秘しておくことによって、観客の予測を出し抜き、驚かすことができる。見る者を感嘆させる意外性が必要だというのだ。
「初心を忘るべからず」もよく知られているが、世阿弥は父・観阿弥から受け継いだ能の秘事を、一子相伝のこの書で子孫に伝えよう、我が家を守ろうと必死なのである。能役者という、当時の社会では身分の低い仕事の世界で、激しい競争を勝ち抜かねばならなかった世阿弥の真剣な思いが伝わってくる。
戻る | 「ことばのオアシス」一覧 | トップページ