榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

劣等感は、病的状態ではなく、自分を高める土台だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(455)】

【amazon 『個人心理学講義』 カスタマーレビュー 2016年7月18日】 情熱的読書人間のないしょ話(455)

散策中に、アカボシゴマダラを見つけました。後翅に鮮やかな赤い紋があります。キアゲハの幼虫も見つかりました。クマバチ(キムネクマバチ)がブーンと唸りを上げて飛び回っています。今シーズン初めてミンミンゼミの鳴き声を耳にしました。捕まえたアブラゼミは、写真を撮ってから放してやりました。雄にはこのように腹部に発音器官の腹弁があり、一方、雌には細長い産卵管があります。因みに、本日の歩数は10,546でした。

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閑話休題、『個人心理学講義――生きることの科学』(アルフレッド・アドラー著、岸見一郎訳、アルテ)で語られているアルフレッド・アドラーの声に耳を傾けたら、アドラーが一番伝えたいことが浮かび上がってきました。

人間は誰でも劣等感を持っている、その劣等感は自分を高める土台となる、こういう望ましい方向へ導くには子供時代の教育・指導が重要だ――というのです。

アドラーがよく口にする「劣等コンプレックス」と「優越コンプレックス」とは、どういうものなのでしょうか。「劣等性と優越性に結びついたコンプレックスという言葉は、劣等感と優越感の追求の過度な状態に他ならないということを忘れてはならない」。「劣等コンプレックスを見出すケースにおいて、優越コンプレックスが、多かれ少なかれ、隠されているのを見出したとしても驚くにはあたらない。他方、優越コンプレックスを調べその連続性を探求すれば、いつも多かれ少なかれ、劣等コンプレックスが隠されているのを見出すことができる」。

「優越性の追求は、決してやむことはない。実際、それは個人の心、精神を構成するものである。人生は目標を達成しようとすること、あるいはそれに具体的な形を与えようとすることである。そして、具体的な形を達成することへと向けて人を動かすのは、優越性の追求である。それは、流れのようなものであって、途中にあるすべてのものを引きずり込む」。

「すべての人は劣等感を持っている。しかし、劣等感は病気ではない。むしろ、健康で正常な努力と成長への刺激である。無能感が個人を圧倒し、有益な活動へ刺激するどころか、人を落ち込ませ、成長できないようにするときに初めて、劣等感は病的な状態となるのである。優越コンプレックスは、劣等コンプレックスを持った人が、困難から逃れる方法として使う方法の一つである。そのような人は、自分が実際には優れていないのに、優れているふりをする。そして、この偽りの成功が、耐えることのできない劣等である状態を補償する。普通の人は優越コンプレックスを持っていない。優越感すら持たない。われわらは、皆成功しようという野心を持っているという意味で優越性を追求する。しかし、このような努力が仕事の中に表現されている限り、精神病の根源にある誤った価値観へと導くことにはならない」。アドラーは、劣等コンプレックスも優越コンプレックスも効果的に治療することができると主張しています。

アドラーの重要な概念である「共同体感覚」は、このように説明されています。「共同体感覚を理解することが必要である。なぜなら、共同体感覚は、われわれの教育や治療の中のもっとも重要な部分だからである。勇気があり、自信があり、リラックスしている人だけが、人生の有利な面からだけでなく、困難からも益を受けることができる。そのような人は、決して恐れたりしない。困難があることは知っているが、それを克服できることも知っており、すべて例外なく対人関係の問題である人生のあらゆる問題に対して準備ができているからである。人間的な観点からすると、対人関係的な行動に対して準備ができていることが必要である」。人間は他者と離れて生きていくことはできないのであり、他者を理解し、意思疎通を図るためには、共感することが土台になるというのです。

「子どもも大人も自分が弱いと感じれば、共同体感覚を持つのをやめ、個人的な優越性を追求するのが、人間の本性の特徴であるように思われる。人生の問題を、共同体感覚をいささかも交えることなく、個人的な優越感を得るという仕方で解決したいと思うのである。優越感を追求し、しかもそれに共同体感覚を交えるのであれば、そのような人は人生の有用な面において、よい結果をもたらすことができる。しかし、共同体感覚を欠いているならば、実際には、人生の問題を解決する準備ができていないのである。問題行動のある子ども、精神病者、犯罪者、自殺者は、このカテゴリーに入る」。

アドラー自身の声を聴くには、最適な一冊です。