榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

トマス・ジェファーソンはキリスト教に批判的だった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2911)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年4月6日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2911)

モモ(写真1)、ドウダンツツジ(写真2、3)、ヤマブキ(写真4~6)、シロヤマブキ(写真7、8)、イリス・アルビカンス(写真9、10)、スノウフレイク(スズランズイセン。写真11、12)が咲いています。シロヤマブキが実を付けています(写真8)。我が家の庭師(女房)から、ハナミズキ(写真13)、エビネ(写真14)が咲き出したわよと報告あり。

閑話休題、『世界を変えた100の手紙――聖パウロからガリレオ、ゴッホまで(上)』(コリン・ソルター著、伊藤はるみ訳、原書房)には、●レオナルド・ダ・ヴィンチがミラノ公に自分の能力を列挙した手紙を書く、●ヘンリー8世がアン・ブーリンにラブレターを書く、●ガリレオが望遠鏡で木星の衛星を見たことを報告する、●トマス・ジェファーソンが甥に神の存在の真偽についても考察するようにと助言する、●レクイエムの作曲に悪戦苦闘するモーツァルトが妻に手紙を書く、●チャールズ・ダーウィンが博物学者として探査船に乗り組まないかと誘われる、●エイブラハム・リンカーンはホレス・グリーリーに南北戦争のもっとも重要な目的を明確に語る、●フィンセント・ファン・ゴッホは弟テオに悩みを打ちあける手紙を書く、●ピエール・キュリーがマリアに、彼の所にもどって一緒に研究してほしいと頼む手紙を書く、●オスカー・ワイルドがレディング刑務所からアルフレッド・ダグラス卿に手紙を書く、●作家エミール・ゾラはフランス陸軍の反ユダヤ主義的陰謀を告発する――といった興味深い手紙が収録されています。

例えば、「トマス・ジェファーソンが甥に神の存在の真偽についても考察するようにと助言する」は、このように解説されています。「1787年にある人物が、これから大学生活を始める17歳の甥に助言する手紙を書いた。手紙を書いた叔父とはトマス・ジェファーソンで、当時はアメリカの駐フランス公使としてパリに住んでいた。その当時この手紙が公開されていたら、信心深い人々が住む国の大統領にジェファーソンが選ばれることはなかったかもしれない。・・・宗教については、彼は驚くほど大胆な発言をしている。<神の存在そのものについても、勇気をもって疑いなさい。なぜなら、本当に神が存在するとしたら、その神は盲目的な恐怖から生じた敬意よりも、理性から生まれた敬意のほうを好ましく思われるはずだからだ>と。タキトゥスのような古典を読むときと同じように、理性だけにたよって聖書を読むべきだとジェファーソンは語る。そして<聖書が語る事実が自然の理(ことわり)に反するようなら、より慎重に検証を深めなければならない>として、イエスは(信じられないことだが)<神によってつかわされて処女から生まれ・・・そして天に昇ったのか>それとも(もっと現実的に)<庶子として生まれた心やさしい人物が・・・人々を煽動した罪でローマの法律にしたがって絞首刑に処せられたのか>自分でよく考えるよう勧め、疑問をもつ心のほうが盲目的な信仰よりずっと役に立つと語っていた」。このキリスト教に対する批判的・理性的な考え方を知り、ジェファーソンに親近感を覚えました。

実に読み応えのある一冊です。