榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

安倍晋三と日本会議との、統一教会との闇の関係が明らかに・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2996)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年6月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2996)

さまざまな色合いのユリが咲き競っています。

閑話休題、『日本のカルトと自民党――政教分離を問い直す』(橋爪大三郎著、集英社新書)では、「生長の家から日本会議へ」と「統一教会と自由民主党」について、詳細に考察されています。

●日本会議――
「生長の家ギャング(ギャングは、仲間たち、という意味の言葉で、悪いニュアンスはない。念のため)が、生長の家の学生運動を振り出しに、民族派右翼を経て、日本会議の中核メンバーを占めている。この、とても重要な事実を、菅野完『日本会議の研究』が初めて明らかにした。本署は、菅野氏の仕事に多くを負っている」。私も『日本会議の研究』を読んだが、大変勉強になりました。

「日本会議の本質は、選挙の集票組織である。そして、政権与党(自民党)に対して、選挙支援と投票をひきかえに、特定の政策の採用を迫る。さまざまな団体の寄せ集めだから、政策も多岐にわたっている。たとえば、▶皇位の継承は男系で、▶憲法改正(国防軍、緊急事態、家族など)、▶正しい歴史教科書、▶親学、▶ジェンダーフリーの行き過ぎ反対、▶夫婦別姓反対、▶国旗国歌法、▶有事法制――などである」。

「日本会議はこうした集票力を背景に、政治家(候補者)に対して、自民党に対して、そして政権に対して、おおきな影響力を持つ。これは民主主義にとって、正しいことなのだろうか。よいことなのだろうか。正しいことでも、よいことでもない」。

「日本会議は、安倍(晋三)元首相と太いパイプを保っていた。・・・安倍晋三はなぜ、日本会議と結びつきを深めて行ったのだろう。私の想像はこうだ。それは彼が、岸信介の孫、安倍晋太郎の息子、という政治家の家系に生まれ、地盤と後援会を引き継いで国会議員に当選したという出自以外に、これと言って自慢できる強みがなかったからだ。有力大学の法学部で成績優秀だったわけでもない。恵まれない境遇から実力で這い上がってきたわけでもない。傑出した政治思想や信念や構想があったわけでもない。いわば空っぽだった安倍晋三は、自分を満たす強い理想や信念に憧れた。そしてそれは、左翼やリベラルと反対の立場だとよかった。彼には、政治家の家系で育った、政治に関する嗅覚が身についていた。人柄も素直で明るい。同じ政治家の家系に育った小泉純一郎に目をかけられ、活躍の場を与えられた。安倍晋三という政治家と、日本会議(いや、生長の家ギャングと言うべきだろう)は、互いに求めるものがぴったり一致した。安倍晋三に限らず、戦後のリベラルに飽き足りない、保守志向の政治家たちは、生長の家ギャングの提供する思想と運動に魅力を感じたはずだ。なにしろ彼らは、年季が入っている。そして、宗教的信念に裏付けられている。決してひとを騙しているわけではない。ただの集票マシンではない。こういう磁場が、政治の世界に成立していること。そして現に、日本の政治を動かしていること。こういう現実を、日本の有権者はもっとよく知っておく必要がある」。

●統一教会――
「なぜ統一教会は、日本で流行しましたか」という質問に対する答え――。「統一教会はカルトです。反社会的で、病原性が高い。カルトだから、伝染力が高くて、広まってしまった。そして、その正体がわからなくて、社会がワクチンを用意することができなかった。ノーマルなキリスト教とカルトの区別がつかなかった。これが、統一教会が広まった理由だと思います。・・・日本の場合、そもそもキリスト教があまり広まっていません。そこで、キリスト教に入るはずが、キリスト教系新宗教に入ってしまうという場合があります。統一教会の、キリスト教の部分に魅力を感じるのですね」。

「統一教会のようなカルトが政治と関わるのは、どこが問題なのですか」という質問に対する答え――。「政教分離の原則から言って、問題です。それになお問題なのは、統一教会にはっきりとした政治目的があって、それが危険で、しかも隠されていることです。だから、民主主義にとって、とても有害です。・・・政権政党に喰い込み、政治家を教育し、信者の議員、シンパの議員を増やして、政治的影響力を強めよう。そうやって日本の政治を左右し、地上に神の王国を実現しよう。それが、統一教会の信仰の内容なのです。議員のなかには何人か、うかうかと『政策協定』にサインしたひとがいました、危険このうえない」。

「統一教会は、1954年に韓国で設立され、日本で半世紀あまり活動しているカルト教団である。数々の問題を起こしたうえ、長年、政権与党にも喰い込んでいる」。

「統一教会は、国際勝共連合を組織した昔から、岸信介元首相に接近し、それ以後も自民党の有力者に喰い込んできた。単一の宗教団体で、ここまで水面下の影響力を持つに至った団体はない。その実際を理解しなければならない」。

「自民党も、多くの野党も、党組織は弱体である。個人後援会はあるかもしれないが、地方の党組織は実体がないに等しい。頼りになる実働部隊もいない。候補者は、人集めから選挙事務所の立ち上げまで、全部自分でやらなければならない。そんなとき、ボランティアの一団が乗り込んできて、ポスター貼りから投票依頼の電話かけから、何から何まで任せてくださいとどしどしやってしまう。とにかく場数を踏んでいて、経験値が高い。候補者より選挙に慣れていたりする。ボランティアは有償だったり無償だったりするのだろうが、こんなに安心なことはない。聞けば統一教会の信徒の人びとだというが、何かまうものかという気になる。とにかく選挙の役に立つのだ。安倍首相は統一教会とパイプがあり、安倍派を中心に、こうした選挙ボランティアを手配する役割をかねていたという。それが、安倍氏の政治力の一端でもあった」。