SF嫌いの私が、沼野充義の手助けを得て、レムの『ソラリス』から学んだ3つのこと・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3089)】
アキアカネ(写真1~5。前が雄)の交尾、産卵を目撃しました。アオモンイトトンボの交尾(写真6。上が雄)、ショウジョウトンボの雄(写真7)、シロオビノメイガ(写真8)、ハクセキレイ(写真9)、セグロセキレイ(写真10)をカメラに収めました。ショウキズイセン(ショウキラン、リコリス・トラワビ。写真11、12)、ヒガンバナ(写真13、14)が咲いています。
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閑話休題、SF嫌いの私は、スタニスワフ・レムの『ソラリス』という作品が古典的なSF小説ということさえ知りませんでした。そんな私だが、『スタニスワフ・レム ソラリス』(沼野充義著、NHK出版・NHK 100分de名著)のおかげで、『ソラリス』を通じて著者が読者に伝えたかったことを知ることができました。沼野充義は頼り甲斐のある導き手です。
「『ソラリス』という小説は、一言で言えば、人間と人間以外の理性との“接触”の物語です。主人公の心理学者クリス・ケルヴィンは、その表面を覆う海が意思を持つとされる惑星ソラリスの謎を解くため、ソラリスの海の上空にある観測ステーションにやってきます。しかし、そのステーションでは異様なことが起きており、そこにいた研究員たちの言動は不穏で、やがてクリスの身にもソラリスの海がもたらす不可思議な現象が起きることになります」。
レムが読者に伝えたかったことの第1は、意思疎通のできない絶対的他者と出会ったときは、逃げることなく違和感に身をさらし続けよ――ということです。「この小説は、意思疎通のできない絶対的他者との出会いと、それに対して人間の知性がどう振る舞えるかという物語になっています。そしてレムという人の知性は、このような絶対的他者に出会ったとき、それを拒否して背を向けてしまうのではなく、そこから逃げず、出会ったときの違和感に身をさらし続けるという姿勢を取ります。そのレムの姿勢が、この作品全体を貫いているのです」。
第2は、巨大なものを前にしたときは、自分にできることをやろう――ということです。「クリスがハリーに対して言った『自分たちの力でできることは、二人でいっしょにやっていこう』というセリフも、結末に呼応する一つのメッセージかもしれません。自分たちの小さな力ではどうしようみない巨大なものを前にしたとき、そうだと理解しつつもできることをやろうとする。降参せずに向き合い続ける。ここは小説のポジティブなところで、クリスは『異質で理解できないからどうしようもない』と絶望に陥る一歩手前で踏みとどまる勇気のようなものを失わない人です。そこに力があると思います」。
第3は、自分を絶対化するな――ということです。「レムはいかなる強権的イデオロギーも信じない、強靭な懐疑的相対主義を鍛えて育ってきた人です」。
ここまで沼野に導かれたからには、沼野訳の『ソラリス』(ハヤカワ文庫)に挑戦しなければ!