榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

難解で迷宮のような小説『薔薇の名前』の最高の手引き書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3211)】

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2024年1月31日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3211)

幸運にも、5頭の越冬中のムラサキツバメ(写真1~5)を見つけることができました。ルリビタキの雄(写真6~10)、キセキレイ(写真11~13)、タヌキ(写真14、15)をカメラに収めました。因みに、本日の歩数は17,559でした。

閑話休題、難解で迷宮のような小説とされる『薔薇の名前』の手引き書『エーコ 薔薇の名前――迷宮をめぐる<はてしない物語>』(図師宣忠著、慶應義塾大学出版会・世界を読み解く一冊の本)を手にしました。

「舞台は中世キリスト教世界――。1327年11月末、北イタリアのベネディクト会修道院で奇怪な連続殺人事件が起こる。『ヨハネの黙示録』になぞらえたと思しきその事件の謎に挑むのは、頭脳明晰なフランチェスコ会の修道士パスカヴィルのウィリアムとその弟子メルクのアドソ。やがて迷宮構造の図書館に収められた一冊の書物の存在が『謎』への鍵として浮かび上がるのだが・・・。記号論の大家ウンベルト・エーコが紡ぎ出した遠大な物語世界とその中に幾重にも張り巡らされた『知』のたくらみ。『現代』を生きる私たちは、『中世』を舞台としたこの物語から何を読み取ることができるだろうか」。

「『謎』に満ちたこの小説は、随所に記号論的分析、聖書分析、西洋中世研究、文学理論といった諸要素をふんだんに盛り込んだ知的で難解な作品である。ミステリー? 探偵小説? はたまた歴史小説? そのいずれでもあり、そのいずれの枠にも収まりきらない、それ自体がまるで迷宮であるかのような深奥で複雑な内容と構造を持つこの作品は、『世界を読み解く一冊の本』(シリーズ)に相応しい」。

「エーコは、メルクのアドソという『中世の年代記作者の口を通して語る』ことで『中世について語るだけではなく、中世の中で語る』ことを目論んでいる。そのため、物語を読み進めるうちに、私たち読み手は『中世』の現実をまざまざと追体験することになる。『薔薇の名前』は『過去を語る』という歴史認識をめぐる諸問題についてもじつに刺激的な問いを投げかけているのだ。エーコによって語られた『中世』の世界は、リアルとフィクションのはざまでどのような相貌を見せるのか。本書では、中世ヨーロッパという過去の世界のさまざまな側面に光を当てながら、エーコの『薔薇の名前』を繙き、その魅力に迫ってみたい」。

著者の宣言どおり、『薔薇の名前』の舞台、構造、時代環境が丁寧に解説されていきます。

この、よき導き手のおかげで、『薔薇の名前』の魅力を理解することができました。ここまで来たら、いよいよ、『薔薇の名前』そのものに挑戦せざるを得ませんね。