榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

霧、森、小川に出会いたくなったら・・・【情熱的読書人間のないしょ話(20)】

【恋する♥読書部 2014年8月4日号】 情熱的読書人間のないしょ話(20)

以前は、夏季休暇が取れると、軽井沢や蓼科を女房とよく訪れたものです。ある年、八ケ岳の霧ケ峰の車山から標高1632mにある八島湿原(八島ケ原湿原)へと車を走らせた時のことです。ビーナスライン脇の駐車場から少し歩いて八島湿原を目にしたのですが、何ということでしょう、濃い霧にすっぽりと包まれているではありませんか。足元に気を配りながらそろそろと木道を行くと、木々のシルエットがぼーっと現れては消えていくという、まるで夢の世界のような幻想的・神秘的な体験をすることができました。私にとっては、人生で一番印象的な光景でした。

これ以来、私は「霧」の虜になってしまったのですが、そうそう簡単には霧の光景には出会えません。数年後に、幸運にも、霧に煙る蓼科第二牧場に遭遇できた時の感激は忘れられません。なだらかな丘陵に点在する放牧中の馬や牛のシルエットに恍惚となっている私の脇で、女房も無言で立ち尽くしていました。

閑話休題、静まり返る森や小川のせせらぎに出会いたくなったときは、『日本の森100――日本森林インストラクター協会選定』(日本森林インストラクター協会編著、山と溪谷社)が役に立ちます。

森の専門家ともいうべき森林インストラクターたちによって選び抜かれた、北は北海道から南は沖縄までの100カ所の森について、実際に森を歩く場合の具体的なコースや参考になる情報が1カ所2ページにまとめられているからです。「森の中で(in)、森について(about)、森のために(for)」という森林インストラクターたちの思いが籠もった一冊です。

一口に森と言っても、「豊かな自然、信仰・癒やし、火山活動、資源循環、暮らしを守る、再生、遊び・学び」の森など、日本の森は多様で、いずれもが魅力に溢れていることが、よく分かります。

早速、半日コースの「狭山丘陵:埼玉県入間市。雑木林と湿地が織りなす自然豊かな里山景観」、1日コースの「熊野古道 八鬼山:三重県尾鷲市。ヒノキ美林におおわれた癒やしの熊野古道伊勢路」、半日コースの「菊池渓谷:熊本県菊池市・阿蘇市。阿蘇外輪山麓の渓流と多様な森林が織りなす絶景」に出かけたくなってしまいました。