榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「貧しい妻の離婚」の話の原文が読みたくなり、『今昔物語集』に挑戦・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3216)】

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2024年2月5日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3216)

バンとオオバンとカルガモ(写真1、右がバン、奥がオオバン)、バン(写真2、3)、ツグミ(写真4)、不鮮明だがカケス(写真5、6)をカメラに収めました。カケス撮影中に雪が降ってきたので、慌てて帰宅。撮影助手(女房)から、報告2件。1つは、我が家の餌台「空中楽園」にやって来るメジロ(写真7~10)は2羽だと思っていたが、今日は4羽が餌場を争っていたとのこと。もう1つは、「カラの斜塔」には砕いた落花生を置いているが、シジュウカラ(写真11、12)が砕いていない落花生にはどう対応するか確かめようと1粒だけ交ぜておいたところ、邪魔だと言わんばかりに、嘴で銜えて脇にどけたとのこと(写真13)。その「カラの斜塔」も夕刻には雪で真っ白(写真14)。

閑話休題、『平安朝の母と子――貴族と庶民の家族生活史』(服藤早苗著、中公新書)で取り上げられている『今昔物語集』の巻第三十・第四と第五の話に興味を抱き、話の全体が知りたくなり、『今昔物語集――本朝世俗篇(下) 全現代語訳』(武石彰夫訳、講談社学術文庫)を手にしました。第四も第五も切ない物語であることが分かったが、今度は原文が読みたくなってしまいました。

今昔物語集(4』(馬淵和夫・国東文麿・今野達校注・訳、小学館・日本古典文学全集)の巻三十の第四「中務太輔娘成近江郡司婢語」は、<今昔、中務ノ太輔□ノ□□ト云フ人有ケリ>と始まります。なお、「太輔」は正しくは「大助」と注が付されています。

最高潮のシーンは、このように綴られています。<「我レハ実然ニハ非ズヤ」ト云テ泣ケレバ、女、「然ハ、此ハ我ガ本ノ夫也ケリ」ト思ケルニ、心ニ否ヤ不堪ザリケム、物モ不云ズシテ、只氷ニ氷□(この□は疒に至)ケレバ、守、「此ハ何ニ」ト云テ騒ケル程ニ、女失ニケリ>。

この話は、こう解説されています。「離別した夫婦の意外な再会がもたらした悲劇譚。中務大輔某の娘が父母に先立たれて零落し、夫の兵衛佐と別れてわび住まいをしたが、同居の尼の仲立ちで近江国の郡司の子と結ばれて下国した。ところが、たまたま新任の国守として赴任した旧夫の目に止まって再会し、わが身の上を恥じてショック死した話。・・・堀辰雄の『曠野(あらの)』は本話に取材したもの」。早速、『曠野』を読まなくては!

巻三十の第五「身貧男去妻成摂津守妻語」は、<今昔、京ニ極テ身貧キ生者有ケリ>と始まります。

クライマックスは、こう記されています。<男衣ヲ給ハリテ、思ヒ不懸ヌ事ナレバ、「奇異」ト思テ見レバ、紙ノ端ニ被書タル物ノ有リ。此ヲ取テ見ルニ、此ク被書タレバ、男、「早ウ、此ハ我ガ昔ノ妻也ケリ」ト思ニ、「我ガ宿世糸悲ク恥カシ」と思エテ、「御硯ヲ給ハラム」ト云ケレバ、硯ヲ給ヒタレバ、此ク書テナム奉タリケル・・・北ノ方此レヲ見テ、弥ヨ哀ニ悲ク思ケリ。然テ男ハ、葦不苅ズシテ走リ隠レニケリ>。

解説には、こうあります。「前話(第四)とは逆に、離婚をした女の方が立身して摂津守の妻となり、夫とともに任国へ下向の道すがら、難波江で葦を刈る落魄の旧夫を見つけ、哀れんで和歌を添えて衣を与えると、男はそれと察してわが身を恥じ、返歌に思いを託して逃げたという話。葦刈り説話として著名なもので・・・谷崎潤一郎の『蘆刈』も本伝承に取材する」。『蘆刈』も読まねば!