遂に、谷崎潤一郎の『蘆刈』に辿り着いたが・・・ ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3229)】
アオサギ(写真1)、ダイサギ(写真2)、カワウ(写真3)、マガモの雌(写真4)、オナガガモの雄と雌(写真5、奥が雄)、ヒドリガモの雌(写真6)、オカヨシガモの雄(写真7)、雌(写真8)、ハシビロガモの雌(写真9)をカメラに収めました。我が家の餌台によって来るメジロ(写真10~15)、シジュウカラ(写真16、17)を見ていると、時間が経つのを忘れてしまいます。
閑話休題、『平安朝の母と子――貴族と庶民の家族生活史』(服藤早苗著、中公新書)で、立身した女が、落ちぶれた、かつての夫と再会するという『今昔物語集』の巻第三十・第五の話を知りました。話の全体が知りたくなり『今昔物語集――本朝世俗篇(下) 全現代語訳』(武石彰夫訳、講談社学術文庫)を手にし、原文を読みたくなり『今昔物語集(4)』(馬淵和夫・国東文麿・今野達校注・訳、小学館・日本古典文学全集)まで遡りました。
『今昔物語集(4)』の「巻第三十・第五 身貧男去妻成摂津守妻語」の解説の「谷崎潤一郎の『蘆刈』も本伝承に取材する」という一節に導かれ、『吉野葛・蘆刈』(谷崎潤一郎著、岩波文庫)所収の『蘆刈(あしかり)』に辿り着いた次第です。
谷崎潤一郎の『蘆刈』には、正直言って、少々がっかりさせられました。私は『今昔物語集』の巻第三十・第五を谷崎がどう料理するのかということに興味を抱いたのだが、換骨奪胎の程度が激しく、時代背景も物語展開も説話とは大きく異なっていたからです。
だからと言って、谷崎に罪はありません。『今昔物語集』の趣を追い求めた私が悪かったのです。それどころか、さすが、谷崎です。昔の物語から刺激を受けて、独特のマゾヒズム文学作品を創り上げてしまったのですから。
解説に、こうあります。「(『蘆刈』は)『大和物語』百四十八段にもとづいている。これは睦みあっていたけれど、貧しくてたちゆかなくなった夫婦が別れ別れとなり、男はひどく零落して難波の浦にわび住いし、さる高貴な人の妻となった女と再会するが、蘆刈人とおちぶれたわが身を恥じて人の家に逃げ隠れてしまったという話である。女は男の身の上をあわれみ、自分の着ていた衣を脱いで手紙と一緒に男にやったというが、谷崎の『蘆刈』は一面においてこの説話の後日談となっていることに気づかされよう」。蘆刈説話は、『大和物語』にも『今昔物語集』にも存在していたことが分かります。