榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

老母を背板に乗せて息子が楢山に捨てにいく凄まじい物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3308)】

【読書の森 2024年5月2日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3308)

我が家の庭のサツキの上を20匹近くのルリチュウレンジ(写真1~8)が盛んに飛び交っているのに気づき、撮影に夢中になっていたら2時間が経過していました。そのうち、ルリチュウレンジたちは私の体にも止まるようになりました。その間、やって来たアゲハ(写真9)、ヤマトシジミの雄(写真10)をカメラに収めました。我が家の庭師(女房)から、キマダラカメムシ(写真14)が座敷に上がり込んでいるわよ、との報告あり。我が家の庭師は殺虫剤も除草剤も使わないので、我が家は昆虫の楽園なのです。

閑話休題、『楢山節考』(深沢七郎著、新潮文庫)に収められている『楢山節考』は、文字通り凄まじい物語です。

読み終わって暫くは、放心状態でした。

貧しく食料が乏しい部落のお姥(んば)捨ての掟に従い、毅然とした老母・おりんを、孝行息子・辰平が辛い思いを堪えながら、背板に乗せて険しい冬の楢山に捨てにいく一部始終が、実況放送のように淡々と描かれていくからです。

次々と映し出される無惨な光景が、ぎこちなささえ感じさせる感情を排した筆致で描かれているため、余計に身の毛がよだつのです。

おりんを楢山に行かせたくないと思う辰平とその後妻に来たばかりの玉夫婦と、お姥捨てを当然のこととしてしれっとしている孫・けさ吉と嫁入りしてきたばかりの松夫婦との対比が妙に印象に残ります。