『平家物語』の主題は無常観ではない、という指摘・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3398)】
【読書の森 2024年8月2日号】
情熱的読書人間のないしょ話(3398)
ヒャクニチソウ(学名:ジニア・エレガンス)が咲いています。
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閑話休題、『平家物語解剖図鑑――平安武士の生き様がマルわかり』(野中哲輝著、エクスナレッジ)から、『平家物語』の奥深さについて多くの学びが得られました。
第1は、『平家物語』の主題は無常観ではない、という指摘。幾多の変遷を経てきた現存の『平家物語』では、「反鎌倉」の物語群を上から押さえつけるかのように、「親鎌倉」のバイアスが加わっている、すなわち、『平家物語』も実は政治的綱引きの産物だというのです。
第2は、冒頭近くに置かれている、4人の女性がともに仏道を志して極楽往生を遂げるという話の「祇王」の章段に注目して、この世での出世や栄達という価値観を突き崩すかのように、「祇王」が存在するという指摘。『平家物語』は、源平の勝ち負けを超えた一面を持っているというのです。
第3は、一の谷合戦・屋島合戦・壇の浦合戦が源平の三大合戦と呼ばれているが、源平の戦いは一の谷合戦で事実上勝負がついていて、屋島・壇の浦合戦の実像は残党狩り(掃討作戦)に過ぎなかったという指摘。『玉葉』などの当時の記録類を見ても、屋島では合戦らしい合戦はなかったというのです。
『平家物語』に対する理解を深めたい向きにとっては、必読の一冊です。