榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

米国の貴族的な雰囲気の老婦人に日本人の愛人がいるのではないか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3420)】

【読書の森 2024年8月24日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3420)

ササキリの雌(写真1、2)、オオアオイトトンボの雌(写真3、4)、コノシメトンボ(写真5)、ノシメトンボ(写真6)、ナツアカネ(写真7)、オオシオカラトンボの雌(写真8)、吸水するアゲハ(写真9、10)、オオカマキリ(写真11、12)をカメラに収めました。ゴバギボウシ(写真13)、キツネノカミソリ(写真14、15)が咲いています。

閑話休題、70年以上、さまざまな本を読み漁ってきたが、もし私がノーベル文学賞の選考委員だったら、万難を排してノーベル賞を受賞させたいと思う著者・作品に出くわしました。『日本人の恋びと』(イサベル・アジェンデ著、木村裕美訳、河出書房新社)がそれです。著者が繰り広げる現在と過去が交差する世界に引きずり込まれ、展開する物語の先々が気になって読み耽ってしまいました。我に戻ったのは、最終ページのP.317でした。

モルドバ出身の23歳の女性、イリーナ・バジーリィは、アメリカ・サンフランシスコ郊外の老人介護施設で働き始めるが、その施設の入居者、アルマ・ベラスコという「貴族的な雰囲気と、他人を隔てる磁場のせいか、女性のなかでひときわ目立つ」81歳の老婦人に惹かれます。彼女は超裕福なベラスコ家の家長でありながら、なぜか、この施設に自ら入居したのです。イリーナは、アルマにはどうもイチメイ・フクダという名の日本人男性の愛人がいるのではないかという疑いを持ち始めます。

イリーナは、イリーナに好意を持つアルマの孫の若者、セツ・ベラスコと力を合わせ、アルマの謎を解明すべく行動を開始します。

物語が進むにつれて、驚くべきアルマの真実が明らかになっていきます。

それとともに、アルマの夫についての真実も明らかになっていきます。

そして、さらに、イリーナの真実まで明らかになるのです。

これで真実が明らかになったと思った瞬間、新たな真実、さらなる真実と続くので、息つく遑がありません。

愛とは何か、夫婦とは何か、家族とは何か、老化とは何か、死とは何か――を深く考えさせられる作品です。同時に、戦争、人種差別、性的少数者、児童性的虐待の問題についても考えさせられました。