現代韓国の無気力に陥りがちな青年男女の悩み・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2516)】
我が家の庭に毎日やって来るメジロをカメラに収めました。
閑話休題、『三十の反撃』(ソン・ウォンピョン著、矢島暁子訳、祥伝社)では、現代韓国の無気力に陥りがちな青年男女の悩みが臨場感豊かに描き出されています。
30歳の「私」、キム・ジヘは、カルチュラル・センターでアルバイトをしています。
「ほんの一瞬、それ(部屋の契約期間終了)までに何かを解決しなければならない、つまり人生の答えを見つけなければならないという思いが脳裏に浮かんだ。ビールをひとくち口に含んで、喉の奥から湧き上がってくる不安と一緒に飲み込んでしまう。・・・(バラエティ番組で語られる)芸能人の私生活が、私を笑わせてくれる。お腹を抱えて大笑いしたので、少しは、少なくとも一日くらいはまだ耐えられるだろう」。
新しく入ってきた同い年のアルバイト男子、イ・ギュオクとジヘは、自分たちが勤めるセンターのウクレレ講座を一緒に受講することになります。受講生たちの酒の席では、ギュオクが会話をリードします。「僕たちに必要なのは転覆です。目に見える転覆ではなく、価値観の転覆です」。「力を持っている少数はいつも余裕しゃくしゃくなのに、力のない大多数の人は自分たちが何かを変えられるなんて思わないからです。僕たちは、諦めて我慢するしかないと思わされているんです」。「そう考えている限り、世の中はますます悪くなりますよ。悔しい思いをしてただ愚痴ばかり言ってるんじゃなくて、何でもいいから行動しなきゃ。僕の言う転覆はそういうことです。世の中全体は変えられなくても、小さな理不尽一つひとつに対して、相手に一泡吹かせることくらいはできると信じること。そんな価値観の転覆なんです」。
ギュオクを見るジヘの視線が変化していきます。
「人生楽に生きてきたんですね」と言うギュオクを睨み、ジヘは反論します。「もう穏やかに暮らしたいだけです。夢とか、自分が何をやりたいのかとか考える必要もなく、誰にも邪魔されずに一日一日を穏やかに暮らしてみたいんです。私が一番うんざりしている言葉が何かわかりますか? 頑張るという言葉。頑張って生きろという言葉。頑張るのはもうたくさんです。頑張って生きてきました、それなりに。それでもこうなんです。頑張ってきたのに、この歳になってもこうなんです。だったら、もう雁原らなくてもいいじゃないですか」。
やがて、二人の関係はキスという段階まで進みます。ところが、「その日、何かが大きく変わった。そして、何かが永遠に幕を閉じた。これまで生きてきてさまざまな終わりを経験したが、こんな最後は初めてだった。ほろ苦いという言葉では表現しきれない、ふっと力が抜けていくような終わりだった。結局は騒動としか呼びようのない私たちの冒険は、こうして終わった」。
ところがどっこい、この後、いくつものどんでん返しが待ち構えています。