榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

レッサーパンダの進化的由来を解明したのは日本人だった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3426)】

【読書の森 2024年8月30日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3426)

イヌビワが実を付けています。

閑話休題、天の邪鬼の私は、ジャイアントパンダよりもレッサーパンダのほうが好きで、書斎のレッサーパンダの縫いぐるみに癒やされています。

進化生物学――DNAで学ぶ野乳類の多様性』(佐藤淳著、東京大学出版会)で、個人的に一番興味深いのは、「進化の痕跡」の章の「パンダではあるがパンダではない」の節です。

●レッサーパンダは食肉目レッサーパンダ科に属する哺乳類であり、現生種としては1種のみが知られている。英名では、ジャイアントパンダと比較して小さなパンダを意味するレッサーパンダか、あるいは赤茶けた毛色にもとづく赤いパンダを意味するレッドパンダと呼ばれている。

●近年、遺伝子解析がさかんにおこなわれるようになってからもなかなかその由来は明らかにならず、世界の研究者たちがその解明を競い合ってきた。いったいレッサーパンダはなにものなのだろうか?

●その後、分岐年代の推定の結果、レッサーパンダの系統はイタチ科とアライグマ科の祖先との間で、約3000万年前に分岐したと推定された。長い進化の歴史を維持してきた、たった1種類の哺乳類であったのである。180年の謎が解明された瞬間であった!

●レッサーパンダは竹を食らうパンダではあるが、クマと近縁なジャイアントパンダと異なるという意味で、パンダではなかったということになる。

著者がなぜ、これほど、この解明を喜んでいるかというと、この「レッサーパンダの進化的由来の解明」という論文は著者とその教えを受けた女子学生によって、2009年12月に発表されたものだからです。その後、この論文は世界中の研究者に引用され、この系統仮説は現在も支持されていると、著者は胸を張っています。

お見事! 進化生物学は面白いなあ。