2度の心中事件後に自害した大正期の天才歌人・苑田岳葉の歌に隠された事実とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3477)】
【読書の森 2024年10月17日号】
情熱的読書人間のないしょ話(3477)
アサギマダラの雄(写真1~4)、交尾中のツマグロヒョウモンと横入りしようとする雄(写真5、6。左が雄、中が雌、右が横入りしようとする雄)、キタテハ(写真7、8)、アゲハ(写真9)、モンシロチョウ(写真10、11)、キタキチョウ(写真12)、ガのフクラスズメの幼虫(写真13)をカメラに収めました。撮影助手(女房)と2階のヴェランダで45分粘った甲斐があり、雲間から漸く顔を出した満月をパチリ(写真14、15)。
閑話休題、連作短篇集『戻り川心中』(連城三紀彦著、角川春樹事務所・ハルキ文庫)に収められている『戻り川心中』は、大正時代の心中を巡る推理小説だが、推理小説の域を超えて、芸術に対する人間の業というものについて考えさせられる、奥行きの深い作品です。
「桂川心中」、「菖蒲心中」という2つの心中未遂事件で2人の女性を死に追いやり、自分は死に切れず、その事件を短歌に詠み上げ、2度目の心中未遂事件直後に34歳で自害して果てた大正期の天才歌人・苑田岳葉。
30年前、苑田の生涯を描いた小説『残燈』を桂川心中まで書き継いだものの完結せずに終わらせた「私」は、桂川心中の第2幕ともいうべき、謎の多い菖蒲心中の真相解明に乗り出します。
そして、遂に、岳葉の菖蒲心中後の56首の歌の裏には、誰も知らない――知られてはならない意外な事実が隠されていたことを突き止めます。
どんでん返し、さらに、どんでん返しが続くので、読み手は息つく遑もありません。これだけでも推理小説としては十分成功しているのだが、連城三紀彦の凄さは、このさらなるどんでん返しが平面的などんでん返しではなく、読み手の先入観を根底から覆す、いわば立体的などんでん返しであることです。