榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

健さんに先を越されてしまいました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3563)】

【読書の森 2025年1月6日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3563)

メジロ(写真1)、シジュウカラ(写真2)、コゲラ(写真3)、コガモの雄(写真4)をカメラに収めました。ソシンロウバイ(写真5~7)が咲いています。

閑話休題、死を迎えた時、女房に「私の人生最大の幸運は君と出会えたこと」と言おうと決めています。『高倉健、その愛』(小田貴月著、文芸春秋)を読んで、健さんに先を越されてしまったことを知りました。高倉健が亡くなる2カ月前に、17年連れ添った33歳年下の小田貴(たか。高倉没後は貴月と表記)に「僕の人生で一番嬉しかったのは貴と出逢ったこと」と書き遺していたからです。

この高倉の言葉が、高倉と貴の関係を如実に物語っています。映画俳優は見せる=魅せる生業であるという美学を貫いた高倉と、その意を汲んで高倉の生前は表に一切出なかった貴。その愛の清々しさに胸を打たれました。

本書のおかげで、高倉について知らなかったことをたくさん知ることができました。

●寡黙で饒舌。

●家では、喜怒哀楽の感情を隠すことなく、ありのままに出した。

●仕事以外では目立たずに過ごすのが好き。撮影のない日々は、四季の移ろいを愛でながら自然とふれあい、穏やかに暮らす人だった。

●華やかな場や群れから身を遠ざけ、折り目正しく自分の時間を守り通そうとしていた。

●人見知りで好奇心旺盛、自分にないものを吸収しようとする努力を、生涯惜しまなかった。

●東日本大震災は高倉にとって第二の敗戦。

●「四耐四不(したいしふ)」(王陽明)という言葉を心の灯明としていた。

●「何時も笑って死ねる様に!」。

●『八甲田山』と『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』のヒットは「運が良かったんだね、運だよ運」。

●「黒澤(明)さんの映画(『乱』)に出てたら、僕の人生は違ってた」。

●「映画は国境を越え言葉を超えて、『生きる悲しみ』を希望や勇気に変えることができる力を秘めている」。

●『モロッコ』、『哀愁』、『ローマの休日』、『太陽がいっぱい』、『アラビアのロレンス』、『ひまわり』、『黄昏』(1981年)、『紅いコーリャン』、『シンドラーのリスト』、『運動靴と赤い金魚』などを気に入っていた(私の好きな映画と重なっているのが嬉しい)。「ロミー・シュナイダーが美しいだけに、あまりにも残酷な物語」と高倉がコメントしている『追想』は、ぜひ見なくては!