榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

斎藤茂吉、金子光晴、柳原白蓮の強烈なラブレター・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3615)】

【読書の森 2025年2月27日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3615)

ジンチョウゲ(写真1~5)が咲き始め、芳香を放っています。我が家の庭師(女房)から、ニホンズイセンだけでなく、庭の隅で八重咲きのスイセン(写真6)も咲き出したわよ、との報告あり。因みに、本日の歩数は11,937でした。

閑話休題、『世紀のラブレター』(梯久美子著、新潮新書)で取り上げられているラブレターはいずれも興味深いが、とりわけ強く印象に残ったのは、斎藤茂吉、金子光晴、柳原白蓮――の3人のものです。

●斎藤茂吉
<ふさ子さん! ふさ子さんはなぜこんなにいい女体なのですか。何ともいへない、いい女体なのですか>(妻子ある52歳の斎藤茂吉が、美貌の弟子・永井ふさ子<25歳>に送った手紙)。

●金子光晴
<僕がのんだ君の樹液。――僕の内部の萌芽と、君のひこばえ。それがうんだ二人の間の愛情は、持続しがたい愛の方則の上で、二人を永く結びつけるやうに思はれる>(妻子ある52歳の金子光晴が、22歳の愛人・大川内令子に送った手紙)。

永井ふさ子も大川内令子も、ずるずると関係を続けた挙げ句、中年に近い年齢になってから自然消滅のような形となり、結局は婚期を逃している、そのことを知って読むと、ずいぶんと罪つくりな恋文に思えてくると、著者・梯久美子は書いています。

●柳原白蓮
<覚悟していらつしやいまし。こんな怖ろしい女、もういや、いやですか。いやならいやと早く仰い。さあ何(ど)うです。お返事は?>(伊藤伝右衛門の妻・柳原白蓮<35歳>が7歳年下の宮崎龍介に送った手紙)。

その後、結婚した二人は生涯睦まじく暮らし、白蓮は昭和42年、81歳で、龍介に看取られて亡くなりました。