榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

不確実な時代のビジネスパーソン向けの現代語訳『歎異抄』・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3787)】

【読書の森 2025年8月5日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3787)

超訳 歎異抄』(安永雄彦編訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、銀行員、経営コンサルタントを経て浄土真宗の僧侶となった著者の手になる『歎異抄』の現代語訳という点で、類書と一線を画しています。

「『コントロールできるものとできないものを見極めること』は、ビジネスパーソンにとって重要なスキルであり、心の安定を保ち、合理的な判断を下すための鍵となります。この視点をもつことで、不確実な時代をしなやかに生き抜く力が身につくのではないでしょうか」。長らく企業で働いてきた私は、著者のこの言葉に全面的に賛成です。

▶<善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや>。自分の中にある「悪」に気づかない善人でも往生できるのであれば、自分の「悪」を自覚して、それとともに生きるしかない悪人は、言うまでもなく往生できるという「悪人正機」▶自分の努力や行いで救われるのではなく、自分の力だけではどうにもならない私たちを、阿弥陀様が必ず救ってくれるという「他力本願」、▶自分の力でなんとかしようとするのではなく、阿弥陀様の救いを全面的に受け入れるという「絶対他力」――に著者は注目しています。

●善人すら極楽に行けるのなら、悪人はもちろん行ける。
●善人とは、自分の中の「悪」に気づかない人。もっと正確に言うのであれば、「自分を善人だと思い込んでいる人」のこと。
●人間は悪を免れることはできない。
●悪人の自覚をもつ人こそが救われる。
●どんなに悪いことをしたとしても救われる。
●罪悪にまみれて生き、そして死んでいく。

●厳しい戒律や高度な学問を究めることなどとうてい無理な私たち。
●阿弥陀様は最終的には救ってくださる。
●念仏とは、阿弥陀様の慈悲に感謝する行為。
●念仏は、むなしい世界でただ一つの真実。