科学的に正しく見える疑似科学、陰謀論に騙されるな・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3892)】


『「科学的に正しい」の罠』(千葉聡著、SB新書)は、疑似科学、陰謀論の危険性に警鐘を鳴らしています。
疑似科学、陰謀論とは、本書では、科学的で一見正しいが、実は信用できない説明、誤った説明、有害な説明、さらには科学でない説明などを指しています。
ダーウィン進化論を否定する創造科学、ID論、メンデル遺伝学を否定するトロフィム・ルイセンコのミチューリン生物学、ワクチン接種を巡る反ワクチン運動、地峡温暖化懐疑論などが、疑似科学、陰謀論の実例として挙げられています。
そして、今や、SNSや動画メディアなどの新技術が疑似科学、陰謀論の炎を拡大させる燃料となっていると指摘しています。
「2010年代から、一見『科学的に正しい』と感じられる、巧妙な事例が増えている。特にSNSや動画サイトを利用して、科学的な専門用語や画像、データを駆使して科学としての客観性を巧みに装う。またCOVID-19陰謀論、ワクチンDNA改変説など、政党や国会機関に浸透し、政治家が積極的に取り込み政策化する権力型の傾向を示す。特定の価値観やイデオロギーと連携している点も特徴である。これらが『科学的に最も支持される結論や予測、対策』と対立し、政治化して混乱を引き起こすケースも多い」。このような危険な風潮が日本、米国などで跋扈しているのです。
では、信用してはならない科学をどう見分けたらいいのでしょうか。「まずどんな説明も、最初に疑ってみる。あるいはいったん正否の判断を保留するようにしていれば、かなりの割合で危険を避けられる。では一見『正しい』と思えた時はどうすればいいだろう。一応の目安はある。相手の動機(陰謀、利権など)や価値観(イデオロギーや差別意識)を先に強調し、心地よさ、怒り、共感など強い感情で引きつけ、しかも検証可能な情報を示さない説明は疑った方がよい。マスコミや映像メディア、SNSは、注目を集めるための感情にも強く訴える記事やコメントを出すが、科学に関する限り、こうした感情的な主張は信頼できない」。正直言って、この対応では不十分というか頼りなさを感じるが、残念ながら、私にも、これだという有効策は思いつきません。
