絵本は子供のためだけのものではないことに気づかせてくれる本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(327)】
我が家の最寄り駅である、つくばエクスプレスの流山おおたかの森駅の構内には、大きな鉄製の馬が据えられています。その凛々しい姿に励まされているような気持ちになります。この駅から程近い、オオタカが棲息する市野谷の森のシンボル・ツリー的存在が、20mを超える大きなシラカシです。散策中に、あちこちで見かける、葉を落とした木々も間もなく若葉に覆われることでしょう。
閑話休題、『絵本はこころの架け橋』(岡田達信著、瑞雲社)は、大人のための絵本セラピーの入門書です。
「もともと絵本セラピーは私の個人的体験から始まりました。『大人が絵本を読むと深いメッセージを受け取ることがある』と感じた私は、身近な大人たちと絵本を読み始めました。すると同じ絵本を読んでも私とは違う受け取り方をする人が多いことに気づいたのです。絵本の感想や受け取り方にはその人の経験や価値観や知識などが垣間見え、それをとても面白く感じましたし、絵本が鏡のようになってその人を映し出しているようにも思えました。大人には大人の絵本の楽しみ方があり、絵本の感想などを通して自分を知る機会になると気づいたことから、『絵本セラピー』というプログラムを考案し試行錯誤を重ねてきました」。
絵本の世界を共有した人たちが、感じたこと、考えたことを話し合うことで、違う価値観や世界観に触れることができ、その価値観や世界観を互いに認め合うことで、皆の視野が広がっていくというのです。絵本は個々人の世界を繋ぐ「こころの架け橋」になるというのです。
巻末に、「絵本セラピーに効く大人の絵本箱50冊」が掲載されていますが、例えば、『まわるおすし』(長谷川義史著、ブロンズ新社)は、このように紹介されています。「●あらすじ=今日はおとうさんの給料日。月に一度の廻るお寿司の日。ぼくたちはお店になだれ込んだ。廻っているお寿司から目を離さないようにしながらも、おとうさんのサインを待つ。お父さんがひじに手をやった。『青いお皿から狙っていけ』のサインだ。お父さんがガリをつまんだら『ちょっと休め』のサインだ。どんどん食べ進めていよいよクライマックス。何を食べるか迷っていると・・・。●絵本セラピー=家族で回転ずし。家族内での決め事によって月に一度のイベントになっています。この一家の子どもたちはきっと将来、お寿司の味よりも家族の思い出として回転ずしを懐かしむのではないでしょうか。食べ物そのものの価値(値段)よりも、どんな状況で誰と食べたのかが、記憶に残るものなのかもしれません。あなたの思い出の食事は何ですか?」。
絵本は子供のためだけのものではないことに気づかせてくれる一冊です。