榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

自分以上のベストセラー作家になってしまった妻を殺そうと綿密な殺人計画を練り上げた推理作家に起こった思いがけないこと・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3900)】

【読書の森 2025年11月26日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3900)

さまざまな色合いのキクが咲いています。

閑話休題、『本好きに捧げる英国ミステリ傑作選』(クリスチアナ・ブランド他著、マーティン・エドワーズ編、深町眞理子他訳、創元推理文庫)には力作16篇が収められているが、一番印象に残ったのは、『性格(キャラクター)の問題』(ヴィクター・カニング著、山田順子訳)です。

ベストセラー推理作家ジェフリー・ギルロイがなぜ妻を殺そうと決めたのか、それは、虚栄心のせいでした。10年前にギルロイが20歳のマーサと結婚した頃、一途にギルロイを愛していたマーサは夫の原稿をタイプするだけだったが、そのうち、夫に作品上のアイディアを提供するようになります。

やがて、自身の作品を発表するようになったマーサは瞬く間に、夫を大きく凌ぐベストセラー作家になってしまいます。

「そんな状況のなかで、ギルロイはイヴリン・マークスという女性と恋に落ちた。マーサはそれに気づいているが、ふたりがそれを話題にしたことは一度もない。彼女はまだ夫を愛しているし、いずれ夫は妻である自分の元に帰ってくると信じていたので、離婚するつもりもなかった。ふたりはいっしょに暮らしていたが、夫とその妻という関係ではなくなっていた、それでもマーサは、夫を待つ暮らしに甘んじているだけではなく、必ず夫が帰ってくると確信していた。そうして2年が過ぎた・・・」。

ギルロイは妻を殺そうと決意し、綿密な殺人計画を練り上げます。

そして、遂に、実行に移すが、思いがけないことが・・・。